「ポトスライムの舟」
芥川賞受賞作なので、ベタですけど。「私の本みたい!」と勧められて興味が湧きました。貸してくれて有難う。m(_"_)m読んだらね、本当に私だった。爆。それ故、イタ過ぎて、なかなか読み進められず。汗。作品自体は、痛い内容ではありません。単に自分とキャラが被り過ぎて、個人的に集中砲火を浴びたようなものでして。内容としては、20代終盤のごく普通の女性の、ごく普通の日常を、さり気無いタッチで描写したものです。映画に喩えるならば、淡々としたミニシアター系ヨーロッパ映画。間違っても、笑いあり涙あり、アクションありロマンスありの、てんこ盛りハリウッド映画ではない。山あり谷あり、波乱万丈、花も嵐も踏み越えて~という展開を求めている方には向きませんので、ご注意を。書かれている事は、有り触れた日常で、特に何か事件が起こるという訳でもないのに、主人公の生活や動向が気になる。波乱万丈な物語ならば、ある程度、構成力や文章力に難があっても、ストーリー展開で読者を引っ張ってゆけます。でも、この終始一貫して淡泊な話を、飽きさせずに読ませるというのは、実に難しい。さらっと書かれていますが、そこは職人技でしょう。加えて、日常に対する観察眼に唸らされました。普通の人間ならば、記憶する事無く過ごしてしまう、当たり前の事を再認識させてくれる。本を勧めてくれた友人は、余りに私と発想や行動が似ているので、私にも書けと言ってくれましたが、私にこの職人技は不可能です。(^_^;)私の海馬には、絶対に残っていない事柄が散りばめられているんですもの。何気ない事を記憶に留めておくのって、案外、難関ですよ。著者はきっと、主人公のように、逐一メモする性格と見た。でないと、いざ書こうという時に、ネタが出ませんよ。こんな瑣末なネタは。もう一冊、別の著作を読みたいかと言うと、それはノーなんですけど、これはこれで上手く纏まっています。一見誰でも書けそうで、なかなか書けない本の見本かも。