ネイサン・ブラウン訳新約聖書
『志無也久世無志與 』(1880年覆刻版 )/ネイサン・ブラウン訳(しんやくぜんしょ) 以前、元恵泉女学園長の川田殖(しげる)先生が、「本のひろば」というキリスト教書の書評雑誌に載せていた文を読んで、興味がわきました。読めるかな、という心配もありながら、その聖書が写本の異読などについても記しているとのことで、思い切って購入してみました。 まずページを開いて最初、「う~ん。読めない」って感じでした。しかし、聖書の言葉ですから、連想しながら読んでいくと、わからなかったかな文字が分かるようになってきました。 (クリックすると別窓で拡大します) この写真の箇所は、レプタ二枚を入れるやもめについてイエス様が語られたところですが、「さいせんばこ」の「ば」や「みたり」の「み」や「た」、「われ」の「わ」や「なんじらに」の「に」、「すべて」の「す」など、今私たちが使っているかな文字ではないことが分かります。でも、全部かな文字で訳し、しかも異読の読みまでついているというのは、すごい聖書です。これが、1880年、いまから約130年前の聖書の姿であることを考えると、当時の宣教師の姿勢に並々ならぬものを感じます。 また、この写真でも異読がローマ字表記されているところが分かります。「かれらは みな その あまれる ところより そなえ ものを うちに いれり」とありますが、「そなえ」というところに、「3,5,6 Kamini sonayetaru」とありますが、最初の数字が写本のナンバー(巻頭に解説があります)を示し、ローマ字表記がその写本の訳ということになります。 いろいろと参考になりそうですが、七五調の訳というのも語調がよく、耳に心地よい感じがします(意味が分かるかどうかは別としても)。 ちなみに、この聖書を翻訳したネイサン・ブラウンという宣教師は、1873年に来日した米北部バプテスト伝道会の宣教師で、横浜開港資料館のページにも記されています。 また、画像で見る聖書の歴史というページも興味深いです。