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2008.03.07
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夜のイルミネーションの中、街中は買い物客で賑わっていた。周りを見渡せば、手と手を絡み合わせはしゃいでいるカップルや、父親に肩車される子供の姿が見受けられる。

獄寺はそんな中で、一人当てもなく歩いていた。家へ帰ったところで一人だ。獄寺はあまり家の中にいるのが好きではなかった。部屋で一人でいると、どうしても母と過ごした幸せな日々を思い出してしまうから。
最近ではよく沢田家を訪ね、一人でいる時間も少なくなったが、それでももともと一人の時間が好きな訳ではなかった彼にとって、帰宅後何時間も一人の空間にいることは苦痛で仕方がないのだ。


(もう、いい加減慣れたけどな…)


ふと両手を開いて手のひらを見つめると、少し赤く腫れて膨らんでいた。
常にダイナマイトの手入れなどで指を動かしていた獄寺はさほど冷え性というわけでもなかったが、冬は苦手だ。昔から少し身体が弱かったのもありこの時期は風邪を引くことも多かった。獄寺は、今年も気を付けなければならないな、と溜息を吐き肩をすくめた。



昔、獄寺が母親と住んでいた頃は、よく赤くなった手を彼女が暖めてくれたものだ。

『手が冷たくなるのは、隼人の心が温かい証拠なのよ』

そう言って笑った母親の顔は今ではハッキリと思い出せなくなってしまったが、その頃の二人は一点の曇りもない、心から幸せなのだと表現するような、そんな笑顔を見せていたと―――今でも信じている。いや、むしろその美化された過去の記憶が、今の自分の心を支えているのかもしれない。
支える柱がなくなれば、全て崩れ落ちそう、なのだ。

現に…今は、その暖かな幸せは目の前にない。

愛されることを諦めた訳ではなかった。周りのカップルを見て、暖め合う二人を見て、憧れないといえば嘘になる。いつか―――それは恋人でなくても、家族でなくてもいい。自分が必要とし、必要とされる存在が現れることを、心の奥底で願っているのかも知れない。
もしかすると、その相手を次期ボンゴレボスにあたる沢田綱吉にと、自分は彼を選んだのだろうか。



それでも、自分の指先はまだ

――――こんなにも冷たくて、こんなにも寂しい。



自分には10代目という存在があるのに…まだ足りないとでもいうのだろうか。随分と贅沢になったものだ。
人間の欲は、どうしてこうも限りがないのだろう。一つ手に入れれば、また一つ欲っするようになる。それでは何も変わりはしないのに。




ぴゅうと風が吹くのを感じ、寒気が増した。獄寺は、手のひらに息を吹きかけ、手と手を擦り合わせて寒さを凌ごうとする。

「はぁ……そろそろ帰るか…」

冷え切った手をもう一度ジャケットのポケットにしまうと、獄寺は自宅へと歩みを進めた。





* * *





スーパーで父親に頼まれた買い物を済ませた山本は、店から出ると同時に、見慣れた後姿を見つけた。ぱぁっと大きく瞳を光らせた山本がその背中に呼びかけようと口を開くのに、そう時間は掛からなかった。
しかし、


「ご…っ、」


呼び掛けようとした山本の声が、彼らしくもなく一瞬で詰まる。ふと視線を逸らし、横顔を見せた少年の表情。どこか遠くを見つめるその翡翠色の瞳にいつものような活気がなく、普段なら堂々とした背中が、今日は随分と弱々しい。
しかしその様子が妙に色っぽくて、山本は、吸い込まれるようにその姿に見入った。

ハッと我に返ったのは、その背中がぴくりと動き、歩を進めた時だった。


「獄寺!!!」


気が付けば、その背中に呼びかけていた。前を歩いていた獄寺は、声がした方を振り返り、その声の持ち主を確認する。


「やっぱり。獄寺、買い物か?珍しいな」
「っ、野球バカ…」


平然を装い話しかけたつもりだった。自分は何も見ていない、と。たった今偶然店を出て獄寺に遭遇しただけだと。
しかし獄寺と瞳がぶつかった瞬間、手を伸ばしていた。

寂しそうで、今にも泣きそうな瞳。目の奥の方がゆらゆらと揺れている。

そうだ、この少年は時々ふとこんな表情を見せる。そんな瞳を見せられて、動揺せずにいられる筈がない。
じっとその瞳を見つめていると、獄寺は恥じらいからか自らフイッと瞳を逸らせた。そのままの流れるかのように、再び背を向けて歩きだそうとする獄寺を、今度は逃がさないように腕を掴む。


「行くなよ」
「……?!」


いつもへらへらと笑っている筈の山本が、いつになく真剣な瞳を向けるので、今度は獄寺も視線を逸らすことが出来ずに真っ直ぐその漆黒の瞳を見据えてしまった。
先程と打って変わって、一度捉えられると逃げることが出来なくなり、獄寺はどうすることも出来ず、ただただ目の前の男を睨み返した。


「…っん、だよ!」

「獄寺、何でそんな寂しそうな顔してんの」

「…ッ!!!」


強く睨み付けてきていた瞳を、山本の言葉が一瞬にして焦点を定まらなくさせた。頬を染めたまま下を向くと、銀色の髪がさらりとその表情を隠した。


「獄、寺…」


まるで捨て猫のように肩を丸くして、誰かに拾ってもらえるのを待っているような、そんな。しかしそれをまた、この少年は周りに隠そうと必死だから…
まるで彼の背景にだけ、雨が降るように――――ザーザーと、止まない雨音。震える肩。気が付けば、山本は目の前の少年の引き寄せていた。もっと近くに、と。




「今、声かけねぇと…獄寺、死んじまうんじゃないかって」
「んなッ――――わけ……ねぇだろ、」




手を振り解かれないのは、それほど獄寺が弱っているということなのだろうか。

本当は無意識に抱きしめようとしていた自分に、山本は少なからず驚いていた。路中だとか、そんなこともお構いなしにこの胸に引き寄せたいと思った。
友達として、獄寺のことを心配している。獄寺を安心させてやりたい、友達として…?
よく分からない感情に少々混乱を起こしながらも、山本は強く、しかし優しく、獄寺の手のひらを握った。


――――これがどんな感情であれ、やはり放っておけないのだ。


「獄寺、手冷たい…」
「……」
「こうすれば、あったかいぜ?」
「……」


振り解かれるかも知れないと覚悟しながらも獄寺の凍えた手を握ると、獄寺は無言でそっと握り返してくる。
やっぱり、ずっと 寂しい、寂しい、と訴えかけているようだ。


「とりあえず、今日は一緒に帰って、一日一緒にいてやるよ」
「…っ、別に、いらねー… つーかお前、買い物かなんかだろ?それ、剛に届けてやんなくていいのかよ」
「あー・・・腐るモンじゃねーし、大丈夫だろ!」
「…そうかよ」


そっぽを向こうとする獄寺の視線の先、それを遮るように前に立ち、山本は再び微笑んだ。


「で?」
「……」
「獄寺ンち、帰んだろ?」
「……っ!」


いいの?と少しばかり意地悪く首を傾げると、頬を真っ赤に染めた獄寺が、やっと口を開く。いつも素直になれない獄寺も…今くらいは、精一杯。



「……晩飯作んなら、部屋入れてやっても…いい」



その言葉に待っていたと言わんばかりに心の中でガッツポーズをとってしまう気持ちに、何と名前を付ければ良いのか――――そんな上級な問題を解くのは野球少年の山本には未だ少し早いのかもしれない。




***




何か前に途中まで書いて放置してた話が今更出てきたので、続きを書いてみました(笑)
久しぶりに文章書いた~…やっぱり言語・単語力がないですホント…
もっといろんな単語を覚えたり、いろんな言い回しを覚えたいです。小説読まなきゃだなぁ…
さて、まだ付き合ってない段階での山獄です。
むしろこの後ごきゅの部屋に行って泊まって、お互いに初めて自分の感情に気付けばいいw
とゆうことで、この続き、書きたいなぁ…





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Last updated  2008.03.07 03:35:00
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xxx那由xxx@ のんのんさんへお返事 でこ出し確かに可愛かった…!!(^◇^) …

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