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テーマ:「感ガエル会」映画鑑賞会(37)
カテゴリ:極上の暇つぶし 映画
の第2回です。 1996年の作品で日本でも大ヒットしたチャーミングな作品。 私は初めて、ブラスバンドの演奏がこんなにも魅力あるものか、と知りました。 今回は私が作品を選ばせていただいたのですが、久しぶりに観たくなったのと、ふと、今の日本でこそ、より共感を得られるかも、と思ったのです。 サッチャリズムによって強硬に政治の経済介入が行われ、イギリス中に炭鉱閉鎖が吹き荒れた時代。 ヨークシャーの炭鉱の町の、ブラスバンドの物語。 実際に、1992年、決勝の5日前に炭鉱閉鎖が決まり、神気迫る演奏でロイヤルアルバートホールで優勝を勝ち取った、グライムソープ・コリアリー・バンドをモデルに着想を得、映画でもサントラを担当(演奏シーンでもキャストと一緒に出演)、素晴らしい演奏をたっぷり聞かせてくれます。 本当に彼らの演奏は豊かで、魅力的。 物語は― 炭鉱一筋、バンド一筋の団長ダニー(ピート・ポスルスウェイト)ですが、団員たちの気持ちは、炭鉱存続の危機に楽団どころではありません。 そこに、若い団員アンディ(ユアン・マクレガー)の幼馴染みで、かつてのダニーの親友の孫娘グロリア(タラ・フィッツジェラルド)が美しく成長して現われ、フリューゲルホルン(ブラスの構成楽器で、トランペットに似て、もう少し柔らかな音色)で参加し、団員は活気付くが… 無骨な炭鉱(ヤマ)の男で、とにかくバンド命のピートの存在感。 初々しさの残るユアン。 群集劇スタイルで、それぞれがとても魅力的ですが、ピートの息子役のスティーヴン・トンプキンソンも気に入っています。 10年前のストライキによる停職で、今も大きな借金を抱え、だから楽団の練習にもピートが自転車で迎えに行く。 ピエロのアルバイト先で言う、「炭鉱夫。知りませんか?恐竜、ドードー、炭鉱夫…」 病院の庭で、ヘッドライトを付けて演奏する「ダニーボーイ」、人間の誇りを歌い上げるような「威風堂々」、初めてグロリアがみんなと合わせる「愛のアランフェス」。 オリジナルの「サッド・オールド・デイ」の旋律(劇中で流れタイトルバックの最後に流れる)がこれまた心に沁みました。 何よりも音楽が大事だと言い続けて来たダニーが、「大切なのは人間だ」と、人間の尊厳を問いかける。 人はパンがなくては生きていけないけど、薔薇もなくては生きていけない。 音楽が、生活に根付いた美しさ、力強さ、生きる力や誇り、連帯を生み出す。 物語的なメデタシメデタシはないのに、観た人は不思議な元気を貰います。 ハーマン流に、あったかくておかしくて、実際に炭鉱労働者を長く支援し続けてきたハーマンやピートならではの、とんでもなく厚みのある、古びない作品です。 淀川さんは、英国人と日本人のメンタリティがこれほど似通っているとは!と語っています。 実在のグライムソープ・コリアリー・バンドは健在! 全英での優勝が支援基盤を作り、さらに「ブラス!」によって世界に知名度を高めたようです。 オフィシャル・サイト(「ブラス!」での「ウィリアムテル」の場面の動画が貼られていて視聴できます) 今回知ったのですが、ブラスバンドと吹奏楽は別物なのだそうです。 英国で発祥したブラスバンド(ブラス=金管楽器、の大編成アンサンブル)に木管楽器を足したものが吹奏楽で、日本のものはアメリカと編成が同じなのだとか。 サッチャーの強硬な新自由主義や政府の教育への介入は、そのマイナス面が大きく判明されているのに、近年日本が模倣して取り入れています。 それと、枯れてもUKのセーフティーネットは、日本よりはしっかりしてるんですよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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