ドラマ「カクレカラクリ」
(記事は9月14日に書いています)森博嗣さん原作のドラマ「カクレカラクリ」を見ました。ずいぶん原作と設定が変わっていましたね。小説のことにもふれながら書きますので、未読の方はご注意ください。ドラマでは、主人公の男子学生二人はあべさんとくりもと(? ごめんなさいうろ覚えです)さんでした(原作の郡司さんと栗城さんに対応しているようです)。原作の花梨さんは、ドラマでは二人と学生友達ではなく、二人が温泉でのバイトに訪れた村でたまたま出会ったという設定です。太一くんと玲奈さんは、原作の設定でした。くりもとさんが温泉旅館でバイトに行くことになり、相手を探していました。他人の名前を覚えず口数も少ないあべさんと、ひょんなことから一緒に行くことになります。その村は星がきれいなことで有名で、あべさんは星を見るのが目的なのですね。というんで、古い工場がドラマでは出てきませんでした。トロッコとか、ドラマ化したらかっこいいだろうなぁと思っていたのですが。さて、二人は風車荘に泊まります(というか、本来バイトのはずです)。ところがそこの若旦那の太一くんが、実家が対立している旧家の娘である玲奈さんと仲がよい。120年前に埋められた宝物のうわさのせいもあり、両家は非常に仲が悪い。なんとか両家の仲を良くしたい。そのためには、120年前のカラクリ師が残した暗号を解く必要がある……。こうした話を聞いたあべさんは、太一くんたちが、自分たちに謎を解いてほしいんだと分かるわけですね(飛んでるなぁ、と思いながら観ていました)。玲奈さんの姉、花梨さんも合流し、五人で暗号解読に挑みます。まずは、120年前に作られたカラクリ人形(自動で弓を射るという人形です)の的の謎から。人形の矢は、決して的の真ん中にあたらず、周囲の記号らしきところに当たるのですね。また、同じカラクリ師が両家にそれぞれ残した石碑の暗号も見ていくのですが…。謎解きを進める五人に襲いかかる何者か。太一くんも玲奈さんもけがをし、くりもとさんもおいたがすぎて怪我をします。何者かの襲撃を恐れ、謎解きをやめようと言い出す太一くんや玲奈さん。「両家が仲直りしなくてもよいのか!」と普段クールなあべさんも熱くなり、そして五人は謎の核心に迫っていく―。そんな話になっていました。すごく残念だったのは、120年後に動き出すカラクリ人形という、原作の設定が出てこなかったことです。工場や洞窟が出なかったのも残念ですが、カラクリ人形がドラマではどうなるのかと(というか、映像化したら素敵だろうなと)思っていたので、物足りない感がありました。磯貝先生も、ドラマでは民俗学関連の研究をしている教師という設定で、やっぱりちょっと残念でした。どことなく悪役でしたし。ドラマの、ギャグの要素の多さもびっくりでした。東野圭吾さんの『名探偵の掟』の中でも指摘されていることですが、二時間ドラマは、ひょんなことから事件の核心が導かれます。わざとらしい会話とか。今回の最後の謎解きの決め手など、思わず笑ってしまいました。ドラマの最初の方を見ていたときのテンションのままだったら下手したら不快に感じたかもしれませんが、途中から(早くから?)原作とは別物だと考えてからは、ドラマとしてすごく楽しめたので、あんなのが謎解きのきっかけでも全くかまわない気分にさえなってしまいました。ベタな設定だな、というのが全体的な感想です。ところが、それでも私は泣くんだなぁ、と、再発見でした。普段は他人の名前を間違えるあべさんが、ここぞというときにちゃんと名前を言ったり、さらにラストには、くりはらさんをずっと「くま」と呼んでいた彼がちゃんと本名を呼んだりと、ありがちなのに涙が…。いけませんね。二人の入浴シーンも衝撃でしたね。『名探偵の掟』では、二時間ドラマでは温泉が不可欠ですが、そのために天下一さんも女性になるというのに…。このドラマでは男性二人の入浴シーンです。思い切ったなぁと思いましたが、それはともかく。なにかしらあべさんに抱えるものがあると考えたくりもとさん。「俺はいないと思ってよ」と言って、顔をタオルで隠したりするんですが、そのときにあべさんは語るんですよね。泣かせどころだと分かっていながら涙した私…。つっこみどころ満載でしたが、それも含めて面白かったです。テレビを二時間も続けて見るなんてものすごく久しぶりでしたが、たまにはいいかもしれないな、と思いました。コカコーラの提供なので、CMはひたすらコーラかジョージア。ドラマの中でも何度もコーラ。これも含めて面白かったです。コーラのCMのラップがかっこよかったです(ラップ好きなのです)。原作の、森博嗣『カクレカラクリ』の感想はこちらです。この記事の中でちょっと引き合いにだした、東野圭吾『名探偵の掟』の感想はこちらです。