めんつゆと友人
業務用スーパーで大きなボトルを買うことにしています。調味料は遠慮なく使いたいのです。今日の夕飯の焼肉で「白だし」を少し使って、使いっぱなしだったことに気が付きました。なんとなく白だしが「烏龍茶」に見えました。その瞬間になんだか同じようなことを考えたりした記憶が過去にもあることを思い出しました。あれは大学3年のときの出来事でした。当時私が通っていた大学は、戦後に立てられた古い校舎でした。今はホテルのようなビルになってしまっています。その古い校舎の地下が私たちのたまり場でした。ボロボロにはがれたコンクリートの通路に、どこから拾ってきたのかわからない机や椅子を置いて、たむろっていました。我々の団体の下級生のたまり場ができていました。4年生の先輩がいるところは少しはなれたところにあり、下級生だった私はそのたまり場にいたわけです。4年生から用事があると「お~い3年!」とかお呼びがかかります。4年生の先輩の内の一人が学生食堂でアルバイトをしておりました。普段メチャクチャ怖い人なので、その先輩がアルバイトを始めた頃は恐ろしくて学生食堂に近づけませんでした。そうこうしているうちに「何でテメエラ俺が働いてるのに学食にこねえんだ!」と、わけのわからない怒られ方をしたのでたびたび足を運ぶことにしました。恐る恐る行くとその恐ろしい先輩が盛り付けをやっています。私は「カツカレー並」を注文すると、フルサイズのキーボードくらいある皿を持ってきて、やけに大きな「カツカレー並」を作ってくれました。「食えるだろ!?」とかやけに優しい声をかけていただきました。話が少し脱線してしまったのですが、そんな先輩がときどき学生食堂で余ったものを我々下級生のために持ってきてくれるのです。その日は「うどん」が余ったらしく、パンがトラックで運ばれてくるときの1メートルくらいあるでかいケースにサランラップを敷いて、大量のうどんを入れて持ってきてくれました。2リットルの烏龍茶のペットボトルには「めんつゆ」が入っていました。私は何人かの同級生・下級生といっしょに、地下の薄暗い電灯の下でうどんをいただきました。その当時はメインディッシュを食った後に「わんこそば150杯」とかは平気だったので、うどんはあっという間になくなりました。めんつゆだけが大量に余っています。食事も終わりタバコの煙をくゆらせていると、そこにある同級生のクラチ○コ(仮名)がやってきました。彼はいいやつなのですが、人がものを食べていると「ちょっと一口ちょうだい」と言ってくるのが玉に瑕です。飲み物も「ちょっと一口」があるので、大学4年間で同級生がこいつとほぼ毎日間接キスをしていたんだなあと今になってしみじみ思います。我々の団体の規則で、大学に来たらまず先輩のいる部屋に行って挨拶してこなければなりません。けっこう緊張するものです。クラチ○コは今挨拶に行くところです。私がゴルゴ13を意識して渋い顔をしながらタバコを吸っていると、クラチ○コが珍しく私に向かって「ちょっと一口いい?」と聞いてきます。「人に飲ますものは持ってないなあ…」と思ったのですが、ゴルゴ13を意識してタバコを吸っているときにはあまりしゃべりたくないものです。私は渋い顔をしながら無言でうなづきました。彼が何を一口飲むのかと思って見ていたら、彼は「めんつゆが入った烏龍茶のペットボトル」を持ち上げました。「それは烏龍茶ぢゃない!!」と思いましたが面白そうなので放っておきました。めんつゆが彼の喉を一口通った後、彼はペットボトルの液体が「めんつゆ」であることに気が付いたようです。勢いよく吐き出しました!!!「テメエ!」と言って私を睨みつけるクラチ○コでしたが、「ちょっと一口」と言ったのは彼です。この日以降、彼の「ちょっと一口」は少し回数が減りました。たまに会うけどさすがに今はこのくせが直ったようです。彼は今某一流企業で営業マンとして働いています。私のおかげかな…