『あずみ』
原作は未読ながらも、北村龍平監督作品と言うことで興味があったので、本日、観に行ってきました。私は、北村監督の『VERSUS』を観ていたので、そちら側(?)から観る楽しみ方が出来たのでまだ良かったんですが、同行の不破さんは思いっきり消化不良をおこしてしまっていて、鑑賞中もかなりツラそうな様子でした(苦笑)。そう言う私も、北村作品を鑑賞するのはこれが2本目。なのにこんなエラそうな見方をするのも何なんですが、彼独特のブラックユーモアの効いた見せ方(敵側)と、作品の持つ過酷でシリアスなテーマ性(主人公側)とが折り合っているように見えなかったと言うか、様々な要素が全て分裂してしまっているように見えました。極端な言い方をすれば、単館系の映画と拡大系の映画の要素をひとつにまとめようとして、結局、上手く混ざらずに分離してしまったような感じに見えたと言うか。…っつーか、そもそもメインであるはずの若手俳優たちの演技が、どーにも上手くなかった…(汗)。表情は悪くなかったんですが、とにかくセリフ回しが軽過ぎる。確か原作はかなりシビアな世界観を持つ、評価の高い作品だと聞いていましたが、果たしてそのカラーは彼らの演技にどれだけ反映されていたんでしょうか?決して見るべきところが全くなかったワケではなかったんですが、全体的には殺陣も含めて、どうしても演技が軽く見えてしまう印象は拭えませんでした。それでも、その若手の中では結構、光って見えたのが、成宮寛貴が演じていたうきはかな。クールな役回りが、その雰囲気と押さえ気味の演技とに合ってました。あと、美女丸と闘って倒れる辺りの、小橋賢児が演じるひゅうがの一連のシーン。特に、いつの間にか腕を斬られて呆然とするシーンの演技が、リアリティがあってかなり良かったです。岡本綾が演じていたやえも、時代劇の世界と違和感のない雰囲気のある子で悪くなかった。だから余計に、上戸彩が演じていたあずみの、現代っ子っぽい茶髪メイクと棒読みスレスレのセリフ回しが気になって気になって…。刀の振り方なんかはかなりサマになっていたと思うんですが、セリフを言う演技になってしまうとどーにもこーにも観ていてツラかったです(涙)。個人的には、北村節の効いた三(バカ)兄弟の演技がかなり面白かったんですが、それが主人公側の見せ方やシリアスな作品性とマッチしていたかと言うと、それは疑問に感じると言うか…。あと、肝心の美女丸がなぁ。不破さんが、「あのオダギリ美女丸はタダのバカだ!『スラップスティックス』の演技でちょっと見直してたのに!」と、憤慨していましたが、確かにもうちょっとどーにかならんかったのかなぁと思いました。本人、かなり楽しそうに演じているように見えましたが、女児言葉をしゃべる凄腕の殺人鬼の“スゴみ”が、イマイチ伝わってこなかったんですよねぇ。ひゅうがを切り伏せるシーンでも、スローモーションで右サイドからにこやかにフレームイン→ひゅうがが想いを寄せていたやえの目の前で彼をバッサリ→またにこやかに左サイドへフレームアウトする、どーにも頭の弱そうな美女丸の様子に、せっかく小橋くんが熱演していたと言うのに、申し訳ないと思いつつも笑ってしまいましたよ(汗)。要するに、実はキャスティングがイマイチだったってことになるのかなぁ?キャラクターのビジュアルに合ったキャスティングをすることはとても大事なことだと思いますが、ただコスプレしてポーズをとるだけってワケじゃないんですから、もう少し演技力も考慮した人選をしてくれていれば、もしくは違った形のアプローチの仕方で演技指導をしてくれていれば、もっと作品世界に入り込んで観られた映画になったんじゃないのかなぁ…と思いました。そして、若手俳優中心の時代劇は、とにかくセリフ回しに要注意!だと言うことが、改めてよくわかった映画でした。そう考えると、『魔界転生』の窪塚洋介は所作も含めてかなり上手かったなと。………何だかクボヅカくんの株がまた上がってしまった…(苦笑)。