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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:チェコ(スロバキア)映画
『悪魔の発明』がおもしろかったカレル・ゼマン監督。 どこまでハリボテで、どこまで絵なのか見分けのつかない、不思議な映像世界が広がります。 そこに実写の人間が加わると、もっと幻想的な異空間へと変化する。 アニメーションに近い特撮映画、といった趣。 かといってディズニーの『メリー・ポピンズ』のような違和感がいっさいありません。 『悪魔の発明』につづく、こちらもヴェルヌの冒険小説の映画化です。 1888年、アフリカのある町に駐留するフランス軍は、彗星の大接近による天変地異で、町ごと彗星の上に飛ばされてしまった。 一緒に飛ばされたスペイン人も現地の権力者も、フランス軍との小競り合いを一向に止めないが・・・そんな中、フランス軍の青年士官は、スペイン人の手から逃れてきた美女を助けて、恋に落ちるのだった―――。 とても1970年製作とは思えないような、懐かしい古めかしさ。 科学的でもなければ、リアリティもないけれど、手作り感たっぷりで心くすぐられてしまいます。 緑やオレンジのカラーフィルターや、笑っちゃうほどちゃちい恐竜の人形アニメだって、この時代、他にはない時代錯誤の結晶でステキ。私にはドストライクです。 彗星には恐竜や古代生物が暮らしていている――という設定。 町ごと(なぜに!?)飛んで来ちゃったので、中東の独特な町並のなかを、恐竜に追いかけられるシーンなんかもあり、突飛でユーモラスなところが魅力です。 青年士官の恋と、彗星に飛ばされてまで争いを続ける人間の愚かしさを、シニカルにユーモラスに描く――。 SFファンタジーとしても見られますが、並のSF作品とはかけ離れた位置にあるので、リアリティなど期待する方には不向きです。 小競り合いといえど、フランス軍からみた世界の国々に対する目線が覗けるのがおもしろい。 でも、日本の‘ に ’の字も登場しそうになく、アジアさえ登場しない。 最近の映画には、アジアの文化や存在がいろんなシーンで目につくので、ふと時代を感じるところでもあります。 先日の『ローズ・イン・タイドランド』では、ローズのお父さんが着ていた半纏に<ことぶき>の文字があったっけ・・・。 第二の太陽や、ぐんぐん接近してくる彗星、宇宙から眺めた地球―――。 作り物っぽいのにドキドキ不気味に見せてくれる、ゼマン監督のすごさは一見の価値ありです。 宇宙の広さまで感じられるおすすめの一本。 美男美女の主演のふたりにも注目です。恋模様がビミョーにおかしい。 監督/ カレル・ゼマン 原作/ ジュール・ヴェルヌ 脚本/ カレル・ゼマン ヤン・プロハースカ 撮影/ ルドルフ・スタハル 音楽/ ルボシュ・フィシェル 出演/ フランチシェク・フィリポブスキー エミル・ホーバス ヨセフ・ベトルベッツ (カラー/85分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.11.15 13:35:05
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