『ジプシー・キャラバン』
インドを起源とし、11世紀に世界中へ散らばったジプシー。ヨーロッパを中心に、大家族から成る集団を形成して、各地を転々とする流浪の民。『ジプシー』という呼び名は、今では差別用語になっていて、代わりに、彼らの言葉で「人間」を意味する『ロマ』と呼ぶ。あるものは、インドにとどまり、あるものはアフリカへと渡った。あるものは、ハンガリーに流れ、音楽団を作り歌ってまわった。あるものは、スペインにたどり着き、いまやスペインの代名詞とも言うべき独自の文化を作り上げた。フラメンコのルーツは、このジプシーである。スペイン語では『ヒターノ(女性はヒターナ)』といい、フラメンコの魂である歌(カンテ)の多くは、彼らの民謡であり、独特の言葉で継承されてきた。そのヒターノ出身であり、ワタシの大好きな踊り手のアントニオ・エル・ピパが出ていると聞いて観にいった映画『ジプシー・キャラバン』ですが、、、ハッキリ言ってフラメンコはあんまり出てきません!でも、すごく良かったーーー!!!******* *******●『ジプシー・キャラバン』(HP→ http://www.uplink.co.jp/gypsycaravan/index.php)スペイン、ルーマニア、マケドニア、インドの5つのバンドが、6週間かけて北米の諸都市をまわる【ジプシー・キャラバン・ツアー】を追ったドキュメンタリーでそれぞれのミュージシャンのルーツを訪ねる。ミュージック・ビデオさながら、迫力満点の歌声と音楽。のっけから、なんだか涙が出てくる始末です。耳に心地よい音楽と、そしてエル・ピパの踊りが心も身体も突き抜けて、毛穴が引き締まりっぱなし!それぞれの文化、そしてファミリーが織り成す壮絶かつ気ままな生き方。ワクワクしたり、でも時折り泣き出しそうな衝動につかれたり、約2時間の放映時間は、あっという間だった。エル・ピパの叔母であり、カンタオーラ(歌う人)であるファナ・ラ・デル・ピパいわく、「その衝動こそが【デュエンデ(フラメンコで使われる「魔力」とか「悪魔」的な意味)】のせい」なんだそうで。。。まさしく、ワタシはこの映画の始まりから終わりまで、デュエンデに憑かれておりました。異教徒として早くから迫害の対象とされ、いまだ根強い差別を受けているロマ。だからこそ、彼らの放つ音楽や歌、そして踊りは強靭な響きを持っている。自由って、実は不自由なもんかも知れませんね。