ベランダのナミアゲハ
この夏はほとんどお出かけもせず、家におりました。家でのお楽しみのひとつが、自然観察です。我が家のベランダには、わずかに緑があります。そのうちのひとつが、高さ60センチほどのレモンの木。ある夏の日、レモンの葉の上に虫がいるのを、次男が見つけました。スマホで写真をとり、ソフトで調べます。どうやら、ナミアゲハの幼虫です。ナミアゲハは、ミカン科の木を選んで産卵するようです。こんな小さなレモンの木を、母チョウはよくぞ見つけたと思います。体長1センチ半ほどの、焦げ茶と白。どこからどう見ても、鳥のふんにしか見えません。天敵のふんに擬態するなんて、自然にはびっくりです。幼虫は、生まれてみたらひとり。お母さんもいない。孤独な生です。どう育つのでしょう。この日から、幼虫の観察が日課になりました。2日ほどして、葉の付け根、一番太い葉脈の上にじっと動かなくなりました。体長24ミリ。どうやらそのまま脱皮したようで、気づけば、レモンの葉と同じ緑色に変身していました。脱いだ皮は食べてしまうようで、あとかたもありません。お見事!緑色の幼虫は、もりもりむしゃむしゃと葉を食べて、30ミリ、35ミリ、とすくすく育っていました。よく見ると、木のなかの、柔らかいところばかり食われています。食事を観察すると、けっこうな勢いです。針のような葉脈1本を残し、きれいに平らげたりも。体をつまむと、にゅっとオレンジ色の角を2本出します。臭~い何かと一緒に。なけなしの攻撃です。木は虫食いだらけだけれど、親近感もわいてきて、さなぎになったら枝ごと飼育ケースに移して羽化を見守ろうか、と家族で話していました。観察を始めて1週間ほど。別れは唐突でした。ある晩、幼虫をいくら探しても、見つからないのです。夕方にはいたのに。40ミリを超えていたのに。我が家のベランダには、すずめもよく来ます。・・食われた?・・臭い攻撃、効かなかった?幼虫は、その短い一生を通して、私たちに、この世を生きる強さと厳しさを教えてくれました。ああ、レモンはおいしいな、と思う一瞬があったことを願います。ナミアゲハ、クロアゲハ、アオスジアゲハ。ひらひらと優雅に飛ぶチョウたちを、これまでとは違う気持ちで眺めています。(苦手な方もおられるかな、と、写真は載せませんでした。気になる方は、ぐぐってみてくださいね)自然観察これは、ツマグロヒョウモン。よくよく見かけるチョウです。