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テーマ:洋楽(3395)
カテゴリ:ビートルズ
…などと少々おおげさな言い回しをしてみるのは、この曲を取り上げるにあたって、どうもウマい書き出しを思いつかなかったからである。 '64年2月1日付ビルボード1位。 「じゃんじゃんじゃーん♪」という三拍目の裏打ちリズムからはじまるこの曲は、彼らにとってアメリカにおける初のNo.1ソングだ。 以後7週間ものあいだ首位を守り、その年の年間チャートでも1位に輝いた。 全世界で1,200万枚ものセールスを記録し、ギネス・ブックでは世界歴代シングル売上第5位に認定されているという。 時代を考えれば途方もない大ヒットだったことは想像にかたくない。 また、わが国におけるビートルズのデビュー・シングルでもあり、日本独自の選曲で発売された1stアルバム『ビートルズ!』のトップを飾っているのもこの曲だった。 いわゆる"直撃世代"のファンにとっては、"ビートルズとの出会い(Meet The Beatles)"として鮮烈な一曲だろう。 今でこそお手軽BGMとしての印象も強いが、当時これを聴いた人達の多くは雷にうたれたようなショックをおぼえたという。 その時の大人たちは、FAB4の姿を見て「あの長い髪はなんじゃ!」とフンガイしたらしい。 当時の彼らの髪型は「マッシュルーム・カット」、首すじにかかるかかからないかくらいのオカッパ頭である。それで騒ぎになったというのだから、なんとも微笑ましい時代だったのだ ビートルズの曲は、アメリカでそれ以前にも発売されてはいたが、いずれも弱小レーベルからでありどれもヒットはしなかった。 ビートルズのアメリカ配給レーベルとして知られるキャピタルも、当初は「Please Please Me」、「From Me To You」、「She Loves You」などのリリースを断っていたのである。 マネージャーのブライアン・エプスタインから「アメリカ市場を意識しろ」と言われて書かれたこの曲は、ジョンとポールの数少ない"共作"のひとつである。 作曲作業は、ポールの恋人であるジェーン・アッシャー宅の地下室で行われた。 純朴な歌詞、ストレートなギター・サウンド、屈託のないメロディ、"お約束"な手拍子など、実にハツラツとしたポップ・ソングに仕上がっている。 「ぼくたち仲良し!」といわんばかりに溶け合ったジョンとポールのツイン・ボーカルがとてもまぶしい。 「ほーるゆぁはぁ~ん♪」というサビ部分で、ポールの声がファルセット気味になる所がヒジョーに可愛かったりもする。 レコーディングは'63年の10月17日。 4トラックレコーダーを初めて使って録音された曲でもあり、そのせいか一聴シンプルに聞こえるサウンドだが、実は思ったよりも多くのギターがダビングされている。 ジョンの使っているギターはリッケンバッカ-325。荒っぽく音はこもっているが、力強いピッキングによるリズミカルな演奏だ。 譜面だけではあらわせない、上手いヘタの次元とは違うグルーヴ感がここにはあると思う。 ジョージの弾くリード・ギターのフレーズ(オブリガート)もひとつひとつが効果的。この時代にしてはよく考えられている。 ポールによる、ダブル・ノート(弦を同時に二本弾く)のベース・プレイも見逃せない。全体をささえる音の厚みはこんな所に秘密がある。 ハイハットとトップ・シンバルを部分ごとに使い分けるリンゴのドラムもナイス! 元祖パワーポップとも言える、四人のプレイヤーとしての魅力が凝縮された名トラックといいたい。 「あうぉなほーよー、はぁあんあああんああん」というタメにためたエンディングもたまらんです なお、「抱きしめたい」という邦題は言ってみれば誤訳なのだが、ポップですがすがしいこの曲にぴったりだと思う。 なんでも直訳すればイイってもんじゃないのさ。大切なのは語感、そして曲のイメージに合っているかということ。 そしてこの曲、原題は「I Want To Hold Your Hand」だが、曲中ではどう聴いても「I Wanna Hold...」と歌っており、かつて「タモリ倶楽部」の空耳アワーではそのサビ部分が「アホな放尿犯」に聞こえる、とネタ扱いされてもいた。 番組では一同爆笑していたが、見ている自分は「こじつけや」とテレビに向かってひとりでツッこんでいました。みなさんはどう思います? この曲が1位になる以前、アメリカのチャートは、パット・ブーン、ボビー・ヴィントンやコニー・フランシスのような甘いポップ・シンガーの曲で占められていた。 イギリス人アーティストは、名前すらもほとんどみられなかった。 だが、「I Want To Hold Your Hand」が1位になったのを皮切りに、イギリス人アーティストの数は激増し、ロック的熱さを持った曲が大きな幅を占めていくのである。 ボブ・ディランはビートルズを聴いた時の印象をこう語っている。 「彼らのコードときたら荒っぽくてとても乱暴でした。けれど彼らのハーモニーがその荒っぽいコードを有効なものにしていました。ひとりで演奏していたのではそんなことはできません。(中略)彼らはティニー・ポッパー向けで、すぐに消えてなくなると他のみんなは考えていました。しかし彼ら(ビートルズ)は音楽が向かわなければならない方向を目指しているのだ、ということに私は気付いていたのです」 そしてディランはアコースティックからエレクトリック・ギターに持ちかえて「Like A Rolling Stone」を演奏するのである。 などとつらつら書いてきたものの、実は僕の場合「この曲を好きか?」と聞かれるとそうでもない 「I Want To Hold Your Hand」というと、「Yesterday」と同様に"教科書的ポップソング"なイメージが鼻について、自分からすすんで聴くことはあまりないのだ。 それでも、いざ音が流れてくるとやはり「いい曲だな」と思うし、そのたびに心がおどる。 教科書として残るものは、やはりそれだけの質と魅力をそなえているのだ。 この曲は米パワーポップの雄スミサリーンズが2007年にカバー。 ほぼ完コピといえる演奏ながらほとんど古さを感じさせない所に、この曲の生命力を感じた。 「I Want To Hold Your Hand」を聴くにはここをクリック! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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