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カテゴリ:memories
今日は祖父の誕生日。
90歳になるはずだった。 少し前に、脳梗塞で急に亡くなったそうだ。 着任して数ヶ月しか経ってない私達夫婦が大きなショックを 受ては、また私が無理に帰国して主人に迷惑をかけてはと考え、 家族は祖父の死を私達にはしばらく伝えないでおくことに決めた らしいが・・・知らせて欲しかった。 事情を全く知らない私達夫婦は祝日を利用して、プレゼントを 買いに出かけた。 オーク材で作られたこの国の地図。 州ごとに色の違う木材が使われている。 私達が住んでいる州・都市名のところに、「ここで元気に暮らして います!」と小さなメモを貼って送ろうと思った。 「誕生日には間に合わないけど、おじいちゃんにプレゼントを・・・」と 実家に電話を入れた時、父から訃報を告げられた。 生まれてから大学進学まで、卒業後何年か経ってから結婚する 2年前まで、ずっと一緒に暮らしてきた。 ノエルさんは祖父にとっても可愛がられていた。 「犬だって肩がこるじゃろ~」と言って、ノエルさんをマッサージ していた。 食事の時、祖父と祖母の間、もしくは祖父と私の間がノエルさんの 定位置だった。 「3人のうち、誰が一番長生きするかね?」といつも祖父母は ノエルさんに言っていた。 出発前に「私達が帰国するまで、元気でいなきゃだめだよ。」と 泣きながら話す私に、祖父は「おう、おう!」と笑いながら答えた。 祖父だけは亡くならないような気がずっとしていた。 父と何を話したのか、あまりおぼえていない。 その時は、涙も出てこなかった。 朝起きて、コーヒーを飲み、シャワーを浴び、洗濯、掃除をして 買い物に出かけ、花を生け・・・ 昨日はいつもどおりのようで、いつも以上に忙しく過ごした。 祖父の期待する跡取りになれなかったこと、ひ孫の顔さえ見せられ ないこと・・・色々な思いが心をよぎる。 空白の時間が怖かった。 「こんな時だから、ボクの誕生日は家でいいよ。」と言ってくれた 主人に感謝しながら、彼の好物と小さなケーキを作った。 夕食の席で、「おじいちゃんは・・・おばあちゃんに会えたんだよ。 これでよかったんだよ。」と言った。 きっとそうだと思う。 祖父も寂しかったと思うし、先に旅立った祖母も祖父のことだけが 心配だったと思う。 でも・・・・ 祖父への誕生日プレゼントは、実家へ送った。 表紙に”90☆HAPPY BIRTHDAY☆”と描かれたカードは、中に何の 言葉も書かれないまま、ここにある。 永遠に送ることはないし、捨ててしまうこともないだろう。 葬儀をはじめ亡くなった者を送る一連の行事は、残された者の 気持ちに区切りをつけるためにあるのだろう。 同じ銘柄は手に入らなかったが、祖父の大好きなビールを 買ってきた。 今晩は、3個のグラスにそれを注ぎ、夫婦で祖父の話をしよう。 <コメントいただいた皆様へ> あたたかい励ましの言葉、ありがとうございます。 本当に有難く読ませていただきました。 心から感謝しております。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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