この白星を,ただの1勝にしてはならぬ
私は今日の試合を見聞きするに当たり,ある覚悟を決めていた。カープファンをやって三十有余年。赤ヘル軍団の栄光の歴史を体感させてもらった。カープファンとして,カープの野球こそ日本一であるという矜恃を手にすることもできた。そして,一度だけであるが,広島市民球場にて目の前で胴上げを見ることもできた。ここまでさんざんいい思いをさせてもらっているのである。末期の水を取ることも,栄華の時代を知るカープファンの責務であると腹をくくった。なんといっても,日曜日に松田元の妄言がWEBを飾り,そんなものを見せられたらモチベイションはだだ下がりになるだろうと思っていたのである。実際,スレッジにホームランを打たれ,なお2回にピンチを作ったときは,ほら見ろと思ったものである。実際,大連敗が止まるような試合で,先制点を取られて勝ったためしがない。やはり今日も,とこの時点で思った。しかし,カープにはこの男がいた。十年目にして覚醒した廣瀬純である。清水直行の投じたフォーク系の決め球をぶるんと一戦して捉えた打球は,空中でぐいぐいぐいーんと加速度を増して,レフトスタンドにズドンと突き刺さったのである(わかるかなあ,この擬音語の使い方。誰をモチーフにしたか)。この同点アーチが,明らかに流れを変えた。まあその後のチャンスをものにできなかったところが勝てないチームのつらさなのだろうが,すぐに3回に勝ち越し点を奪った。しかも東出が横浜名物ザル外野の頭を越したスリーベースをきっかけに。これで,この試合の流れは確固たるものになった。とにかく,今日は先発の篠田をはじめ,選手の面々の表情は,まさしく戦う男のそれだった。先週神宮や市民球場で見た自信なさそうに野球をやっては簡単に跳ね返された精気の抜けた表情をしていた男は,誰もいなかった。これぞまさに赤ヘル戦士である。まあ,今頃遅いわいという愚痴の1つもいいたいところではあるが。テレビラジオの中継でくどいくらい繰り返されていたが,さすがに選手も首脳陣も相当の危機感を持ってこの試合に臨んだことは間違いないようである。選手は選手で自主的にミーティングをもち,首脳陣も同様だったようだ。そりゃそうだろう。神宮の3連敗目の試合後,監督へのぶら下がり取材にも差し支えるほどの手ひどい罵声をカープファンから浴びせられ,石井琢朗ブログによると3連敗した対ジャイアンツ戦も,ベンチの後方からやはりヤジ罵声の嵐を受けたようである。ここまでの仕打ちを受けて燃えなきゃ,プロじゃない。今日は篠田と石原のバッテリーということで正直危惧していたのだが,首脳陣も交えてベイスターズの各打者への攻め方がかなり意思統一できていたようである。少なくとも,石原の悪いときに見られる,漫然とアウトコースに構えるなどというシーンは,見られなかった。そして大島。実に楽しそうに投げていた。4点差があったからといえばそれまでだろうが,全く崩れる気配すらなかった。加えて6回裏の攻撃。不振をかこっていた嶋のバックスクリーンへの大アーチ。執念で食らいついた石原のタイムリー。石井琢朗のハーパーの守備が緩慢なところを付いたセーフティバント。東出のスクイズ。しかも一度失敗したその直後に再度敢行するというこれまた執念の賜。この試合のフィーリングを,ぜひ忘れないでほしい。まあ,勝ったから多くは言うまい。次の願いは明日も勝ってくれることである。京都同じようにも得るような執念を持ってプレイをすれば,今度はもっと大量点を取って楽逃げできるかもしれない。今日はそれでもやっぱり連敗中のチームはどうしてもこうなるんだろうなという逸機も見受けられたから。最後に。口には出さずとも,確かにカープの選手の顔には書いてあった。「最下位なんてとんでもない」と。あるいはあの松田元の妄言が逆に選手の反撥力を呼んだのかもしれない。カープとカープファンのプライドのために,意地でも戦い抜いてくれ。BlogPeople↑ポチッと,クリックしていただけると励みになります。よろしくお願いします。(モバイル環境からもクリック可能になりました。「画像を表示」をクリックして,出てきたバナーをクリックすればOKです。)(後記)旧・広島市民球場の市民のコンセンサスなき解体に反対する動きとして,「(旧)広島市民球場フォーラム」のリンクを張らせていただいている。これから新たな展開があることを祈り,あえてこのリンクは継続して張りたいと思う。