間違うことはあるといえども。
我が雑文でも,やっぱり間違うのは気持ちのいいものではない。誤字脱字変換ミスくらいならしょっちゅうだし別に恥ずかしくもないが(←いけません,要反省),勘違いとかで間違うのはやっぱり恥ずかしいものだ。まあ,こんなものはこっそり直したって構わないし,それでも誰も困らない。しかし,これがこと裁判,特に刑事裁判と言うことになると,ことは重大なのであって,結果どうしてそんなことが起こったのかとギリギリ検証されることになる。今朝の新聞やWEBニュースで出たとおり,東京地裁で法定刑が懲役刑は2年以下のわいせつ電磁的記録所持罪において懲役2年6月の判決を言い渡したという一件があった。しかもこれ,検察官が間違って求刑し弁護人も気付かず,裁判官がそのまま判決してしまったというお粗末である。もちろんなぜこんなことが起こったかは裁判所当局がこれから調査するのだろうし,かくいう私も報道された範囲でしか事実関係は分からないが,敢えてなぜこんなことが起こったかということを推測するに,以下の2点が考えられる。すなわち,そもそも法定刑をチェックしていなかった,あるいはしてはならない刑の加重をしてしまった,というところだろうか。前者はまあ私に言わせれば論外だが,ないとはいえない。ただ,法律の専門家が3人もスルーしたくらいだから,ちょっと考えづらかろう。問題は後者である。判決で言い渡す刑の範囲を決めるにあたって刑の加重が考慮されるのは,刑法56条の再犯加重及び刑法45条の併合罪加重である。これも前者は考えづらい。前科があるのを落とすならばまだしも,ありもしない前科を考慮することはまああり得まい。あり得るとしたら後者だろう。些か専門的な話になるが,お暇と興味ののある方はもう少しお付き合い願いたい。本件公訴事実がどうだったかはわからないが,あり得るのは店舗に然るべき数のDVDがあり,そのほか倉庫のような場所があってと客観的には所持罪が数罪成立するようにも見えるパターンである。しかし,わいせつ物(電磁的記録)販売目的所持罪においては,全部ひっくるめて一罪と解されるのである。これがもし数罪と解されるのならば刑法45条,47条により3年以下の懲役を科せるのだが,誤りなのである。でも,蓋しこれは裁判官が一番けしからぬと思う。きっと検察官が求刑してるからということで流れ作業でやっちゃったんだろうな。いや,ついていた書記官もしっかりしろよと思う。判決の点検をする際に法定刑を確認するのと罪数を確認するのはイロハのイであるはずなのだが,それを怠っていたのか,あるいは罪数論に興味がなかったのか。悲しい限りである。著名な民事裁判官である岡口基一判事は,その著書「裁判官は劣化しているのか」で裁判官という世界における智の継承がなされなくなっていることを憂いておられたが,ひょっとしたらこれは,かの社会の構造的欠陥になってきたのかもしれない。刑事ではないが,某地裁が短期間にあり得ないミスを連発して呆れたように報道された例もある。嗚呼,「法律専門職」の矜恃やいずこへ。明日からは本線に戻すつもり。BlogPeopleSIGMA People