ちょっぴりスピリチュアルな話
先日亡くなった同僚のHさん。未だに亡くなったことが信じられない。2日前の金曜日にはピンピンしていたのに…。で、今更ながらだが、ちょっぴり不思議な話がある。亡くなる2日前の金曜日に、多くの社員がHさんの姿を見ている。「同じ会社の社員だから当たり前」と言われそうだが、実は彼はとある役所のプロジェクトの核メンバーとなっており、事実上その役所に出向中で、ここ半年、会社にはほとんど出社していなかった。週に1度立ち寄るくらいで、しかも彼の席は別棟にあったので、本社屋にいる僕は、月に1度くらい顔を見れば良い方だった。当然、他の社員も彼の姿をここのところほとんど拝んでいなかった。それが、問題の金曜日に、なぜかHさんは僕の部署をはじめ、ふだん行くことのない部屋にも出入りしていた。何と、会長室や社長室も訪ねていたらしい。彼自身、まさか2日後に天に召されるなど夢にも思っていなかったろうから、特に死を意識してみんなの顔を見に回ったわけではない。たまたま1週間後に米国出張が予定されていて、「行ってくるね」という挨拶をすることが主目的だったようだ。しかし、行き先は米国ではなく、二度と戻ってはこれない場所だったわけで…。本人は意識していないのに、結果として多くの社員に顔を合わせ、「さよなら」を伝えていた。ただ、僕の部署にHさんが来たとき、僕はその金曜日は来客対応で席を外していて、とうとう彼の姿を見ることはできなかった。「Hさん、僕には何の挨拶もなく行ってしまった…」と思っていると、ふとそこで、さらに3日前の火曜日のことを思い出した。火曜日の朝、出社してパソコンを開けると、Hさんから質問メールが届いていた。その質問の内容が「え? 何で僕に聞くの?」というものだった。まるで僕にとっては門外漢の内容だったのだ。むしろ彼の上司の方が詳しい。「何で上司に聞かずに僕に質問するんだ?」答えるには、細かく調べてみる必要があったから、デリカシーのないそのメールにちょっとカチンときた。無視しようとも思ったが、いや、それでも可哀想だし、と思い直して、あれやこれや資料を引っ張り出し、これだ、という答えを返信する。すると数十分後にお礼のメールが来た。いつもは、舌足らずな適当な文面なのだが、実はこのときの文面は、とても丁寧な言葉で綴られていて、「彼らしくないなぁ」と感じていた。それっきり。彼は帰らぬ人となった。今にして思えば、その丁寧な文面が、彼の僕に対しての別れの言葉だったのだ。無意識ではあるものの、いろんな人に対して永遠の別れを告げていたHさん。今はただご冥福を祈るのみ。