検見川送信所にプレート贈呈
検見川送信所の話です。 かねてより、建築学的にも無線通信史的にも価値ある施設として、僕も保存運動に関わっているのですが、建築家の間でもこの建物の価値は相当なものなんだそうです。現代建築につながる鉄筋コンクリート造り建築の黎明期、すなわち大正の終わりから昭和初期にかけて竣工した建物は相応の価値があるものの、実はあまり現存していません。保存されている近代建築といえばそれよりさらにさかのぼり、明治の頃に建てられた建物が中心です。その頃の建物は石造りや煉瓦積みが主体で、重厚かつ華美であり、「いかにも遺すのにふさわしい」造形です。反面、鉄筋コンクリート造り、なかんずく検見川送信所のように無駄な装飾を限りなくなくし、合理的で実用的な側面を追求した「モダニズム建築」というジャンルの建物は、素人目には造形的に面白くなく、なかなかその価値が伝わりにくい。なので、スクラップにされやすいのです。これは日本に限らず世界的な傾向だそうで、だから1920年代のコンクリート造りの建物は、世界的にも貴重になりつつあるんだそうです。そういった「モダニズム建築」を後世に残すために各国の行政当局に提言をする団体があります。DOCOMOMO(ドコモモ)というのがそれ。何だか携帯電話会社みたいな名前ですが、正式名称の「Documentation and Conservation of buildings,sites and neighbourhoods of the Modern Movement」を略したもので、これを日本語訳すると「モダン・ムーブメントにかかわる建物と環境形成の記録調査および保存のための国際組織」となります。本部はフランスのパリに置かれ、日本にも「DOCOMOMO Japan」と称する支部があり、日本国内の、遺すにふさわしい建築物をDOCOMOMO Japanが選定、関係当局に働きかける活動を行っています。そして検見川送信所も2008年にDOCOMOMO Japanの選定建物に選ばれました。このたび、ようやくDOCOMOMO Japanから選定建物を表すプレートができあがり、送信所の所有者である千葉市に寄贈したい、ということになりました。どうせなら保存に理解の深い熊谷千葉市長に直接手渡そう、となり、千葉県建築家協会の方で市に打診していたところ、今日の午後、市長のスケジュールが調整できるということで、急遽、贈呈式が行われることになりました。僕も午後から駆けつけたいと思っています。歴史ある建物の活かし方価格:3,675円(税込、送料別)