出来杉くんを兄に持つ弟の悲哀 (2) ~私の失敗~
中学3年間、全教科殆どオール10(英語が時折9だった)の見事な成績で卒業した兄と入れ違いに入学した仁。その兄の担任の先生が仁の担任となり、家庭訪問の第一声で、私は愕然とする。(以下、2月28日の日記より抜粋) >「たっくんパート2が来る、というから、皆で緊張し、楽しみに待ってたのに、 なんじゃ、こりゃ。でした」 >「おかあさん、なんぼか、さえんことでしょうが、まぁ、仁くんがフツーですから。 余り気にされんように。 たっくんは、ちょっと出来杉でしたからね」 >「まぁ、仁くんは、笑顔が良いですから。 あの笑顔で一生食べて行けますよ」【私の失敗】 ● 先生に言うべきこと、伝えるべきことを伝えないまま、 「もう結構」と先生にお引取りいただいたこと。 ● 憤懣やる方なく、つい、同じ小学校出身のおかあさんに話してしまったこと。【結果】 ● あっと言う間に広がり、 「仁=なんじゃこりゃ」というネーミングが誕生してしまった。 ● 担任の先生との間がぎくしゃくしてしまった。【先生に伝えるべきだったこと】 ●『たっくんパート2』 「仁」は「仁」なのに、「たっくん」の「パート2」ってどういうことか? ●『皆で緊張し、楽しみに待ってたのに、なんじゃ、こりゃ。でした』 「できる子」でないと「緊張」しないのか。「楽しみ」でないのか。 「なんじゃこりゃ」って!!!!!! どう解釈しても、「がっかり」「期待外れ」としか受け取れない。 ●『なんぼか、さえんことでしょう』 んな訳ない。 私が、仁のあの屈託のない笑顔をどんなに愛しているか。 たっくんの担任として1年間交流があったのに、 私がどういう保護者だと思って、そんなことを言ったのか? ●『仁くんがフツー』 フツーとかフツーでないとか、安易に言葉に出して欲しくない。 何をもってフツーというのか、定義して覚悟してから遣って欲しい。 ●『たっくんは、ちょっと出来杉でしたからね』 仁を「フツー」にするために、たっくんを貶めるような表現は止めて欲しい。 ◆◆◆こんなにも、怒っていたのに。どうしても、言わなくてはならなかったのに。私は『たっくんパート2』というところから、眩暈がするような感覚に襲われ、頭がくらくらとしてしまい、「今日はもう結構です」と機会を逃してしまう。そのくせ、そのまんまを友人に愚痴ってしまった。その友人もおそらく憤慨して、そのまた友人に話したのだと思う。結局、残ったのは仁の渾名としての『なんじゃこりゃ』。そして、担任の先生との気まずさ。最低最悪である。 ◆◆◆ バスケット部で、「仁はのぉ、頭も背も、兄ちゃんの絞りカスじゃけん」と言われた仁だが、持ち前の無敵な笑顔が炸裂し、結局、先輩たちには大変可愛がられたようである。この地ではミニバスがとても盛んで、全国レベルの選手が少なくない。兄も弟も中学の部活でバスケを始めたため、出遅れること甚だしかった。仁の入部早々、1年生からオール関西のメンバーに2人も選ばれた。こんな高いレベルのクラブでは、仁は身長も体力もあまりないため、とても続かないだろうと思っていた。しかし、兄も頑張り通したからなのか、ずっと補欠で3年間頑張り通した。たくさんたくさん惨めな想いをし、哀しい想いをしたようだが、この頑張りには、何があっても褒め続けてあげたい。結局、このクラブの練習に耐えぬいたことと、このクラブのメンバーが、仁を助け、仁を支えてくれたと感じている。 (3)に続く…(続かんかも)