嫌われ松子の一生
日曜日に『嫌われ松子の一生』を観て来た。(以下の内容には若干のネタバレがあるので注意)
これはちょっと…
凄い映画だ。
人生が良い事と悪い事が振り子の様に繰り返し訪れるものだとしたら、『嫌われ松子』はその振り子が最大限に振れた様な大波乱の人生を生きた女性の物語だ。
特に気に入っているのは全体の構成で、物語は死んだ松子のアパートの片付けを甥っ子が任される事から始まり、片付けをする内にその壮絶な人生を知って行くというものだが、この甥っ子という存在により、一つの映画の中に「生まれる前の時間」「生きた時間」「死んだ後の時間」が同時に共有させている。
それにより変化する時代と、死んでからも継続する時間の流れを強烈に意識させられる。
一つの結果が終わりではない事は、プロレスや格闘技を観ていると、良く感じる事だが、分かりやすく例を言えば、一時期世界最強と謳われた、グレイシー柔術は、ブラジルの柔術家が、日本の柔道家に負けた事から研究され発展したものだった。
そうした、時代や出来事が後世に影響を与えて繋がって行く様を描いている所はとても良い。
また、この映画では物語が昭和初期から現代へ帰結する。その事により、まるで松子という人物が先日までそこに実在していたかのようなリアリティを感じさせる。
ミュージカル調の非現実的な演出を施す事で、逆に生々しい人間性を浮き彫りにしてみせる中島哲也監督の手腕は見事と言うしかない。
この人は天才だ。間違いない。
これだけ満足度の高い映画はなかなかない。