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カテゴリ:最近読んだ本
乾ルカ「向かい風で飛べ!」 ソチオリンピックで初めて開催された女子ジャンプ競技、金メダル間違いなしと思われていた高梨沙羅選手がよもやの失速でメダルを逃しました。誰もが金メダルを期待していただけに残念な結果になりましたが、一番悔いが残ったのは高梨選手自身だったでしょう。 スキー・ジャンプは札幌・長野の冬季オリンピックで日本選手が脚光を浴びた競技です。日本全体ではまだまだマイナーな競技ですが、高梨選手の出身地北海道上川町をはじめ地域を挙げて競技の振興や選手の育成を手がけている町もあるようです。 「向かい風で飛べ!」 室井さつきは、小学5年生の秋に札幌から北海道の小さな町の小学校に転校してきました。父親が北海道庁を退職して実家で農業に取り組むことになったからです。 人間関係が出来上がっている児童数20人の小さな世界に、さつきは何かとけこめないものを感じていました。その学級には、独自の雰囲気を持っていて誰からも一目おかれている美少女がいました。その子がスキージャンプの天才少女小山内理子でした。 さつきは競技会で見た理子のジャンプ姿に魅了されます。そして、すぐに町のジャンプ少年団に入団しました。一番小さなジャンプ台からスタートしたさつきでしたが、空を飛ぶという快感にめざめてどんどん上達していったのです。 小説の舞台は北海道の架空の町「沢北町」となっています。しかし、著者はジャンプ競技に力を入れている北海道上川郡下川町(紛らわしいのですが高梨選手の出身地は上川郡上川町)に実際に取材して書いています。 人口3500人の小さな下川町にジャンプ台が4つもあるようです。ミディアムヒル(K点65m)、スモールヒル(K点40m、K点26m)、ミニヒル(K点8m)の4つです。なかでも、K点8mというミニヒルが、想像するにとても微笑ましいです。小学校低学年の子どもたちが、鼻の頭を真っ赤にして飛んでいる様子が目に浮かぶようです。 「向かい風で飛ぶ!」を読んで、このようにして高梨選手も育ったんだなと思いました。多くの人がテレビでしか見ないスポーツです。そのマイナーな世界を描いたとてもタイムリーな小説でした。 高梨選手も向かい風で飛んだら金メダルだった。彼女の不運は追い風でたたきつけられるように着地したことです。この試練をバネに、高梨沙羅は更に高みに飛んでいくことでしょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014/02/20 01:31:06 AM
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