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テーマ:読書(8580)
カテゴリ:最近読んだ本
中央のために地方が負うリスク 新聞もテレビもあの日から3周年ということで特集を組んでいました。被災地にはまだまだ多くの困難があることが伝えられています。 東日本大震災を社会学の面から考察した本がありました。震災後2年足らずの時点での考察ですから不十分な面もありますが、示唆に富む部分もたくさんありました。 o 著者は震災発生当時は弘前大学の准教授でした。震災直後の2011年4月から現在までは首都大学東京の准教授で、専攻は都市社会学、地域社会学、環境社会学です。 著者は、「東北」という呼称自体に周辺性があると言います。「東北」とはその地域の人が自分たちのことを呼んだ言葉ではないと指摘するのです。確かに、中学校の社会科でもその点を踏まえて、「陸奥」とか「みちのく=道の奥」という言葉を取り扱います。 2010年、東北新幹線が新青森まで開通して物流面での中央からの広域システムが完成します。しかし著者は、新幹線は仙台や盛岡といった地方中心都市には経済効果をもたらしたが、結果的には東北の中の周辺地域を増やすことにつながったと言います。確かにそのとおりです。 東京電力福島原発も広域システムの一部でした。著者は、原発事故を人為的ミスとか政治的判断ミスだけで考えず、システム全体の問題として考えるよう提起しています。 脱原発運動は国家のエネルギー問題、広域システムのあり方そのものに深く関わるものだ。そしてその行く末は、「原発は恐い」という感情論にとどまらず、被災地の復興を左右し、またすでにある全国の原発立地地域の将来を決定づけることにもなる。 著者は脱原発ではなく脱システムという視点の大切さを指摘するのです。一部の紹介では誤解のおそれもあります。著者の論は政治的側面からでなく、被災地の人々や多くの関係者に出会って集積したデータによる、社会学的な分析に立っていることを付記しておきます。 今回の震災ではこうした暮らしの視点、周辺の視点が強引に脇に押しやられ、中心の視点がつねに決定をリードしている。~中略~ 1年以上も前に書かれたことですが今の現状にそのままあてはまります。復興が進んでいないことを如実に示しています。東日本大震災から3年目となる今もまた今後も、中央支配の広域システムの中で周辺をどう自立させていくかという大きな課題が突きつけられています。 ※青文字部分は「東北発の震災論~周辺から広域システムを考える」(山下祐介:ちくま新書2013年1月)からの引用 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014/03/13 12:31:19 AM
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