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ざっくばらんな旅日記 文庫本の新刊コーナーで見つけた。この元本は2013年3月に新潮社から単行本として発行されている。高峰秀子は2010年12月に没した(86歳)から、没後約2年後の刊行だったようだ。 1958年のベニス映画祭に、出演した映画「無法松の一生」が出品されたのを機会に、8月24日パリ、ローマを経てベニスに行く。羽田から13時間でアンカレッジ、そこから15時間でパリのオルリー空港という、今なら考えられない北極回りのルートである。 映画祭で「無法松の一生」は金獅子賞を受ける。映画祭の喧噪から離れてパリに着いたのが9月8日、それから翌年3月8日に帰国するまでは、基本的にプライベートな旅だった。 このエッセイは死後偶然に発見されて、本になった。高峰秀子は多くのメモを残しているがまだ本になっていないエッセイの形のメモは新しい発見だったという。 「旅日記ヨーロッパ二人三脚」 1958年~59年(高峰34歳)にかけての、夫松山善三との7ヶ月あまりのヨーロッパ旅行の記録である。二人三脚と行っても、この時点ですでに高峰は代表作「二十四の瞳」や「浮雲」で有名な女優になっていたから至る所で多くの人と出会っている。この本は、いろんな人と出会い、いろんな映画や劇を見て、多くのレストランであれこれと食べ、珍しい品物を買うという日常が淡々と綴られている。 特に靴やバッグをよく買っている。当時の日本は高度経済成長が始まったばかりである。まだまだ舶来品(これも死語に近い古い言葉だが)が重宝された時代なのだ。そのころ高峰には多くの知人があったが、それらの人々への土産用に布地を買っているのも時代を感じさせる。 このエッセイは、歯に衣着せぬ表現で書き散らされていて、他の彼女の本と同じように豪快そのものである。料理のまずいことや街の不衛生さなどには最上級の言葉でやり込めている。 また、「うんこ」や「おしっこ」の話も面白い。 「10月23日 そう、今もってヨーロッパの町歩きにはトイレの場所確認がまず肝心なことなのだ。その点、誰でも自由に使える清潔なトイレが至る所に整備してある日本は確かに「おもてなし」の国だ 二人は、フランス・イタリア・スペイン・ドイツと旅して、2月19日にフランスのマルセイユに着き、2月24日に彼等の船はマルセイユを出港する。途中のエジプトのポートサイド、アカバ、ボンベイ、コロンボでの見聞もとても興味深く面白い。 シンガポール、マニラ、香港を経て、高峰秀子の35歳の誕生日である3月27日に神戸に入港している。それからもいくつもの名作に出演しているが。晩年はエッセイや自伝を書くのが中心になり多くの本を残している。 そのなかでも「私の渡世日記(上・下)」(1998年文春文庫初版)が白眉である。誰かが、「高峰秀子がもし男だったら(といったら今は問題もあるだろうが)天下を取っただろう」と言ったと聞くが、確かにそう感じさせる生き様だったことが伝わってくる。 ↓「私の渡世日記」についてはこの記事でも触れている 以前も書いているが、彼女の生き様はやはり「あっぱれ」という言葉がふさわしい。 ↓ランキングに参加しています。よかったらクリックをお願いします。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016/07/03 01:29:11 PM
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