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「キャパへの追走」 沢木耕太郎の著書「キャパの十字架」(文芸春秋2013年2月第1冊)については、6年前にこのブログで書いた。ロバート・キャパを一躍有名にした「崩れ落ちる兵士」という1枚の写真の真実に肉薄したルポルタージュであった。 ↓2013年2月16日の記事「1枚の写真の真実に肉薄する」 「崩れ落ちる兵士」 しかも、この写真はキャパ本人が撮影したものではなかった。一兵士が訓練中に何か物につまづいて倒れようとするところを、当時のキャパの恋人で戦場写真家でもあったゲルダ・タローが撮影したというのが沢木の結論である。 綿密な現地踏査の旅と様々な検証によって組み立てられた沢木の仮説は、真実だったであろうと思われる。しかし、それがキャパの写真家としての実績を無に帰するものではない。沢木の中にもキャパへの敬意が今も十分にあるのだ。 この検証の旅の成果を受け、新しいプランが出版社から提案された。それは、戦場カメラマンとしてのキャパが撮影した多くの写真の撮影場所を特定し、その同じ場所で沢木が現在の写真を撮って一冊の本にするという計画だった。 「キャパへの追走~(文芸春秋2015年5月5日第1刷)」 キャパの足跡をたどる沢木の旅は、20代のときの「深夜特急」の旅を思わせる。20代の旅と違い編集者が同行する旅だったろうが、ホテルや交通機関を探し、撮影場所を特定していく過程は、推理小説を読むようなスリルに満ちていて面白い。 「崩れ落ちる兵士」の翌年(1937年)、恋人ゲルダ・タローは事故死する。その後、キャパは、日中戦争、第2次世界大戦、第1次中東戦争、第1次インドシナ戦争を撮影する。戦場の第一線に出る機会に恵まれず、戦時下の市民を撮った写真が多いが、このことが多くの写真の撮影場所を特定できた大きな条件になった。 キャパが主として活躍した時代は1930年代から1950年代半ばである。沢木の旅は2010年から始まった。80年前から60年前という古い時代の撮影地点を探す旅は困難を極めた。 しかし幸運だったのは、主としてキャパが撮影したヨーロッパには石造りの建物が多かったということだ。建物だけでなく窓の形までそっくり残っていた場所もあったりして、著者(沢木)も驚く場面がいくつもあった。 ※ロバート・キャパは1954年5月25日、インドシナ戦争を取材中に地雷に触れて死亡した。今年はキャパ没後65年になる。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019/03/27 02:08:15 PM
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