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テーマ:戦争・平和(87)
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「地政学」で読み解く現代世界
今日は日本の終戦記念日だが、世界では多くの国を巻き込んだ戦争が続いている。ソ連のウクライナ侵略が始まってもうすぐ半年である。我々が得る情報は、ウクライナや反ロシア陣営からの発信が主だが、戦いはプーチンの思惑通りには進んでいないNATO諸国の武器供与や資金援助で、ウクライナはプーチンの予測を超えた健闘をしている。 最近、「地政学」がブームになっている。地政学とは分かりやすく言うと、「軍事戦略」の理論で、子どもんころ遊んだ陣取りゲームや戦争ごっこみたいなものだ。国土の地理的位置や周囲の国との位置関係を考え、自国を防衛する戦略を考える学問である。また、どうすれば自国の領土を増やすことができるかというも含まれる。 少し軍事的な側面を強調したが、その国の地理的な条件(位置、地形、気候など)は、政治や経済にも多大な影響を与える。内陸国は海への出口を求める。島国は海洋進出を図る。半島国家は大国の利害の衝突や民族対立による地域紛争が起きやすい。 第二次世界大戦はファシズムと自由主義の対立、冷戦時代は民主主義対社会主義、というようなイデオロギー対立で語られる面があった。しかし、実は領土や軍事拠点、地下資源の奪い合いというリアルな対立だったとみる方が分かりやすい。 浜田省吾の「NEW STYLE WAR」は1986年に創られた楽曲だが、21世紀の現代の、地政学に基づく国々の対立をとても正確に予言した歌詞に満ちている。 「正義はバランスで計られ」 これは歴史的にイギリスが採ってきた対外戦略である。16世紀には、無敵艦隊を有して海外進出を図ったスペインに対抗した。ナポレオンが欧州を支配した18世紀後半はフランスと対決するためロシアと手を結んだ。20世紀初頭の日露戦争ではロシアと対抗するため日英同盟を結んだ。また、冷戦時のソ連に対抗する採ってNATOの一員となった。 つまり、国際政治は軍事的側面で見ればパワーバランスの上に成り立っている。基本的には海洋国家のイギリスは海洋進出によって繁栄してきた。しかし必要に応じて、地政学的にポイントとなる位置にある国と手を結んでいる。日露戦争の時にロシアの南下を食い止めるために日本と手を結んだのがその一番の例である。 「自由はシステムに組み込まれ」 現代の代表的な独裁国家ロシアと中国は、ユーラシア大陸の中央部を二分するランドパワーの国である。大半が海に面していないこの二国は、他国の干渉を受けにくい。そのため比較的容易に独裁を達成して現在も維持している。 そして、1997年にイギリスから返還された香港に、中国は50年間「一国二制度」を認めると約束したが、2020年7月1日に香港国家安全維持法を施行し香港市民の自由を奪った。そして今は台湾の自由が脅かされている。中国は地政学的に見るとランドパワーの国からシーパワーを兼ね備えた国に変貌しようとしている。 ニコライ2世のロシア帝国は、日露戦争前から不凍港を求め極東のウラジオストックに進出していた。そして朝鮮帝国に傀儡政権を樹立し朝鮮半島を支配しようとした。そこで日本はロシアとの開戦を決意した。そして今、プーチンのロシアは2014年にクリミヤ半島を併合し2022年にウクライナに侵入した。内陸のランドパワーの国が、海への出口を求めシーパワーを手に入れようとして戦争を始めた。 最後に半島国家の歴史を見てみよう。半島は大陸の影響を受けやすい。朝鮮半島を例にあげよう。朝鮮半島は百済・新羅・高句麗の三国時代から中国の王朝に朝貢して臣下の礼をとって来た。それが国家存続の条件だった。そして、13世紀にはランドパワーのモンゴル帝国に侵略され、20世紀にはシーパワーの日本に侵略された。 イベリア、バルカン、クリミア、朝鮮などの諸半島は、常に複数の大きな勢力のせめぎあいの歴史を有している。アラスカ半島を1867年3月30日にロシアからアメリカが買収(1km2あたり5ドルの安価で)のは今思えばとても賢明であった。 ウクライナ戦争は、独裁国家と民主主義国家の戦争といわれる。しかし単純に、領土の奪い合い(領土保全や領土拡大)、人間の闘争本能に基づいた原始的な戦いとみる方が分かりやすい。特にプーチンにとっては、大ロシア帝国、ソビエト連邦の広大な領土を回復するという幼児的な願望が悲惨な戦争の原初的な動機だった。 今起こっていることの一部をここに列挙したが、現在の状況は「地政学」で考察するととても分かりやすい。地理上の条件は不変だから、その土地でどのように国家の存続を維持し、繁栄をもたらすかを政治家や有権者は考えなければならない。 ↓ランキングに参加しています、良かったら下をクリックをしてください。 写真日記ランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022/08/29 02:01:45 PM
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