新しい時代
今、まさに一つの時代が終わろうとしている。二十世紀の理念に生きた巨星が、一人また一人とその輝かしい時代に別れを告げて去って行く。世界の文明は、あらゆる分野において危機に直面しており、深まり行く混迷の中で人々は不安に包まれている。終焉とはさみしい言葉である。喜びは短く、悲しみは長い。喜びは努力しなければ得られないが、悲しみは努力なしにやって来る。人生とは、その大半が苦から楽への、悲しみから喜びへのプロセスである。人間の価値は、このプロセスそのものにどれ程の生き甲斐を見い出し得るかにかかっている。世界は、今後、苦しい不安定な動乱期を経験しなければならないであろう。しかし、それは決して悲しむべき時代ではない。むしろ、動乱期こそ最も素晴らしい時代である。すべてのものがそこから生まれ、あらゆる新しいものがへの可能性をはらんだ生き甲斐のある時代世界中の若人が待ちに待った、夢多き時代がやってきたのである。「感性論哲学の世界」序文 芳村思風著