嶋本昭三&100人の日本人イタリアにアートで突撃!【8】(美術手帳より)
1950年代から半世紀もの年月ヘリコプターから地上に絵具を炸裂させる絵画など独自のアクション・ペインティング&パフォーマンスを繰り広げてきた嶋本昭三。齢77を迎えた2005年、初夏およそ100人のアーティストを率いて敢行されたイタリア関連アート・プロジェクトの旅、その記録-~ヴェネツィアでのフィナーレ~他方、RAW(野口哲郎)は、ヴェネツィア美術高校の近隣の画廊、BacArtギャラリーで、LOCOとインスタレーション作家YUKKO、ふたりそれぞれとのコラボレーションによる写真作品などを発表した。昔懐かしい下町風の雰囲気が残った日本の商店街で、床屋の椅子に座って、紙コップでできた大きな丸い頭を「散髪」するLOCOの姿や、胎内での記憶をイメージして、深紅の布を用いたインスタレーションを作るYUKKOの作品が見せる一瞬の表情が、鮮やかに切り取られていた。こうして、僕らのAUフェスティバルは、世界有数の現代美術の国際展であるヴィネツィア・ビエンナーレと同時期に、この同じ街で自由なパフォーマンスを行い、未来を指向する展覧会をつくって、このイタリアの旅を終えた。嶋本はいう「僕は”何も教えない先生”だ」。師匠とは、弟子にとって、その教えに従い、倣いながら、やがては超えていくべき存在なのがふつうだが、彼に”教え”があるとしたら、それは、「他の芸術家の真似をするな」ということだ。だからこそ、嶋本ほど「超えにくい」師匠はいない、「超えるべき何か」は嶋本ではなく自分の中にあるのだ、と僕らは感じている。ENDアンドレア・マルデガン(アート・コーディネーター)=文「美術手帳」9月号より