クシシュトフ・キエシロフスキー「デカローグ10 ある希望に関する物語」元町映画館
切手収集マニアの父親が死んで、とんでもないお宝が残されているのですが、遺産を何とかしようとやってきた兄弟が、けた違いの遺産に翻弄されるお話でした。
老いた父親の一人暮らしをほったらかしにしていた兄弟が、死んでしまっている父親と出会い直すといえば、まあ、聞こえはいいのですが、残された財産が、二人の、まあ、しみったれた生活では想像もできない額だったこともあって、なんだか経験したことのない欲望に翻弄されていく哀れな成り行きで、まあ、10作のなかでは数少ない笑えるドラマで、ちょっと、コメディの味わいでしたが、苦いものが残るんですよね。ゲラゲラ笑っているわけにもいかない感じというのでしょうか。
面倒だから取り合わないでおこうと思っていたに違いない息子二人のありさまも他人ごとではありませんが、何重にも鍵をかけて、息子たちも世間も拒否して閉じこもっていたかの老人が大金持ちだったことに死んでから初めて気づいて、急に、今や、死んでしまっている親父の後姿を追いかけ始める息子たちの姿にも、まあ、苦いものを感じました。
それにしても、ホント、キエシロフスキーが描く、この巨大なアパートにはいろんな人のいろんな人生があるもんだと感心しますね。
監督 クシシュトフ・キエシロフスキー
製作 リシャルト・フルコフスキ
脚本 クシシュトフ・キエシロフスキー クシシュトフ・ピエシェビッチ
撮影 ヤセット・ブラブト
美術 ハリナ・ドブロボルスカ
編集 エバ・スマル
音楽 ズビグニエフ・プレイスネル
キャスト
ズビグニエフ・ザマホフスキー(アルトゥル弟)
イエルジー・スチュエル(イェジー兄)
1988年・60分・ポーランド
原題「Dekalog 10」「 Dekalog, dziesiec」
2022・04・18-no57・元町映画館no135