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カテゴリ:映画「元町映画館」でお昼寝
ジャン・ルノワール「どん底 」元町映画館
1936年ですから、昭和9年、ほぼ、90年前に作られた作品です。ボクでも名前だけは知っているフランスの名監督ジャン・ルノワールの出世作だそうです。 原作は 「嵐だ。嵐が来るぞ!」(「海燕の歌」) のゴーリキーの、こちらは代表作である戯曲です。 見たことのない古い映画なので、まあ、興味本位でやってきた元町映画館でした。場内はガラガラでした。ところが、これが、まあ、なんと、 ど真ん中のストライク! 観たのはジャン・ルノワール監督の「どん底」です。 登場人物の名前は、なんとなくロシア風ですが、舞台はフランスの貧民窟のようです。で、その「どん底」に生息している「人間ども」、「貧しい人々」が、まず、すばらしいかったですね(笑)。 泥棒稼業しか働き方を知らないペーペル。博打で地位も財産も失った男爵。木賃宿の家主で、けちくさい欲の権化のようなコスティリョフ。その妻でペーペルの情婦ワシリーサ、ひそかにペーペルに恋している妹のナターシャ。アル中の俳優。流しのアコーディオン弾き。いつも真実(?)を口にする哲学老人。金と権力を振り回し、ナターシャに迫るデブの監督官。 見終えた後で、次々と思い浮かぶこの人物たちを巷間から見つけ出してきたのは、おそらく、原作者ゴーリキーの功績でしょうね。しかし、それぞれの人物に生きている人間の顔をあたえたのは、まちがいなくジャン・ルノワールですね。そこはかとないユーモアを漂わせながら、人間喜劇とでもいう感じのドタバタ的筋運びなのですが、目が離せません。中でも、原作には、たしか、登場しない(?)、博打狂いで破滅する男爵を登場させたのがジャン・ルノワールのすごいところで、映画はゴーリキーの「貧しい人々」の世界から離陸して、 ひょっとしたらうまくいくんじゃないか? という「ワクワク」するハッピー・エンディングの予感の中で展開していきます。イヤハヤ、うまいものですね(笑)。 アコーディオンの演奏と、酒場のブラスバンドの音楽だけが、所謂、BGMなのですが、それが見事にドラマの気分を盛り上げていて、アル中の俳優の意味不明な演技と哲学者のトンチンカンなご宣託が世界の行方を暗示しているかのように挿入されるのですが、だからこそでしょうね、なんとなく笑えるのです。 初心で恥ずかしがりな娘と愛のために更生を誓った泥棒の恋物語にすぎないのですが、 いいもの、みちゃった! この、いい気分はどこから来るのでしょうね。 若き日のジャン・ギャバン、男爵を演じているルイ・ジューベ、そして監督ジャン・ルノワールに拍手!でした。年をとってからの姿しか知らなかったのですが、ジャン・ギャバンが1930年代の人気スターだったことに納得しましたよ(笑)。 監督 ジャン・ルノワール 製作 アレクサンドル・カメンカ 原作 マクシム・ゴーリキー 脚本 エブゲーニイ・ザミャーチン ジャック・コンパネーズ ジャン・ルノワール シャルル・スパーク 撮影 フェドート・ブルガソフ ジャック・メルカントン ジャン・バシュレ 美術 ユージン・ローリー ユーグ・ローラン 編集 マルグリット・ルノワール 音楽 ジャン・ウィエネル ロジェ・デゾルミエール 助監督 ジャック・ベッケル キャスト ジャン・ギャバン(ペーペル:泥棒) ルイ・ジューベ(男爵) シュジー・プリム(ワシリーサ:コスティリョフの若い妻) ジュニー・アストル(ナターシャ:ワシリーサの妹) ジャニー・オルト(ナスチャ) ウラジミール・ソコロフ(コスティリョフ:木賃宿の亭主) ロベール・ル・ビギャン(俳優) モーリス・バケ(アコーディオン弾きのアリョーシカ) ルネ・ジェナン(哲学者ルカ) ポール・タン(元電信手) ナタリー・アレクセイエフ(アンナ) アンドレ・ガブリエロ(監督官) カミーユ・ベール(伯爵) レオン・ラリブ(男爵の執事フェリックス) 1936年・93分・フランス 原題「Les bas-fonds」 日本初公開:1937年11月 2023・06・27・no79・元町映画館no176 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.07.02 13:12:05
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