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カテゴリ:映画「元町映画館」でお昼寝
ウェイン・ワン「スモーク」元町映画館 2023年の12月になったころ、元町映画館から持ち帰ったチラシの束から一枚のチラシを引っ張り出してチッチキ夫人が叫びました。
「わたしは、これ!」 というわけで、我が家の2023年のクリスマスは元町映画館のクリスマス3日間限定上映「スモーク」同伴鑑賞に決定しました(笑)。 で、問題は、上のチラシの頬を寄せ合っていらっしゃるお二人が、男と女なのか、男同士なのかでした。 で、見終えて確認しました。ブルックリンの煙草屋の親父と、赤の他人の黒人の盲目の老婆、というわけで、男と女でした。 モノクロで、セリフなし、ただ、ただ、この二人がクリスマスの夜に出会い、こうして抱き合っているシーンが、この映画のすばらしさを、ほどんど歴史的事件のように表現していて、見終えたチッチキ夫人は映画館を出るなり、もう一度叫びました。 「今年のベストワン!サイコー!」 2023年のクリスマスの午後を二人で、この映画を見て過ごした老夫婦は、ため息しきりだったのですが、実は、二人ともこの作品を見るのは初めてではなかったにもかかわらず、「男同士」だったのか、「男と女」だったのか、まったく忘れ果てて盛り上がっていたのですから、まあ、いい加減な話です(笑)。 お話に興味がおありの方にはポール・オースターの原作小説「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」(柴田元幸訳・新潮文庫)をお読みなることをお勧めしますが、題名の「スモーク」は、たばこの煙ですね、あの煙には重さがあるかどうかを、ちょっと困った顔で抱き合っている男オギー・レン(ハーベイ・カイテル)の煙草屋にたむろしているヒマな男たちが喋くりあうシーンで語られるアホ話に出てくるのですが、映画の話が「タバコの煙」だというわけですね。実によくできた題名なのです。 今回、見ていて、ハッと、心を打たれたのは最初のシーンでした。ニューヨークの地下鉄とかが走っている街の俯瞰シーンで始まるのですが、少し遠景に、あのツィン・タワーが映るのですね。1995年の映画ですから当然ですが、あのタワー・ビルが崩落していくシーンを、ほぼ、実況で目にしたことがあるわけですから、映画が「スモーク」と題されている、もう一つの意味をしみじみと受け取ることになったわけです。 ちょっと大げさとお考えになるかもしれませんが、主人公の煙草屋の親爺は、抱き合った、見ず知らずのバーさんの部屋から、盗品に違いないとはいえ、キャノンだかの一眼レフを拝借して、自分の店の前の風景を4000日にわたって、同じ時間に撮り続けていて、そのコレクションされた写真、あの日から10年分の一枚一枚が写しとっている、その時、その時の人や町の姿が、この映画の底に流れているメイン・テーマだと、ボクは感じたのですが、二十年以上前に、この映画を見たときには何も感じなかった、ニューヨークの風景のなかに、まあ、映画の中で作家のポール・ベンジャミン(ウィリアム・ハート)が体験する不幸な偶然と同じように、映画そのものが現実化していることに対する驚きですね。 まあ、それにしても、納得の作品でしたね。クリスマス特集でこの作品を選んだ元町映画館に拍手!でした。いや、ホント、思い出にのこるクリスマスになりましたよ(笑)。 監督 ウェイン・ワン 脚本 ポール・オースター 撮影 アダム・ホレンダー 美術 カリナ・イワノフ 編集 メイジー・ホイ 音楽 レイチェル・ポートマン キャスト ハーベイ・カイテル(オーギー・レン煙草屋) ウィリアム・ハート(ポール・ベンジャミン作家) ストッカード・チャニング(ルビー・マクナット煙草屋の元妻) ハロルド・ペリノー(ラシード・コール黒人の少年) フォレスト・ウィテカー(サイラス・コール少年の父) アシュレイ・ジャッド(フェリシティ元妻の娘) 1995年・113分・PG12・アメリカ・日本合作 原題「Smoke」 2023・12・25・no160・元町映画館no218 追記 ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.03.09 23:47:27
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