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カテゴリ:映画「元町映画館」でお昼寝
アイリーン・ルスティック「リッチランドRichland」元町映画館 朝起きたら、なんだか眩暈がしました。暑い暑い夏が始まっています。
「ああ、これは見よう!」 そう思っていたドキュメンタリーですが、元町映画館、朝一番、10時30分のプログラムです。 ああ、朝から暑い、何とかして‼ とか何とかぶつぶついいながら、なんとかたどり着いた元町映画館でした。 見たのはアイリーン・ルスティックという女性の監督の「リッチランド」というドキュメンタリー作品でした。猛暑のなかやってきて見たのですが、 正解でした(笑)!! 映画製作者、まあ、アイリーン・ルスティック監督ですが、彼女のスタンスというか、世界に対する向き合い方に、少なからぬ共感を感じた作品でした。 ボクたちの世代は、個人個人の「核」をめぐる思考が、賛成か反対かという二項対立の中に飲み込まれた中で50年生きてきた世代といえるかもしれません。 ボク自身についていえば、少年時代に「核」の平和利用は夢でしたが、今では、たとえばチェルノブイリの事故をいろいろなニュースや書物で知り、先の震災でフクシマの原発の事故を目の当たりにし、「想定外」という、傲慢というか、無責任というか、少年時代に刷り込まれた 「人類の進歩と調和」 という1970年の大阪万博のスローガンの底なし沼のような無根拠を照らし出したこの言葉を、何となくな、言い訳のための流行言葉にして 私に責任はありません! とばかりに開きなおっている電力会社や経済優先主義者の姿に 「アホか!?滅ぶぞ!」 と嘯くばかりの老人です。 で、映画です。 まず題名の「リッチランドRichland」です。アメリカの町の名前でした。解説をボクなりに要約してみます。 リッチランド 要するに、あの「マンハッタン計画」の原材料を生産していた軍事都市でした。で、今では、町周辺の核物質汚染の浄化が問題になっているようです。 で、 ボクが一番驚いた! のはこれでした。 町の高校の校章です。 一目見て、わが目を疑うというか、 絶句! でしたね。 映画の中では、この校章を巡って、高校生たちの議論があります。他にも、町の成り立ちや、核に対する考え方について、賛成、反対、否定、肯定、住民たちの意見がインタビューされています。浄化の作業に従事するボランティア、先住民の生活を受け継ぐ老人、その高校の教員だった人、様々な人が真摯にインタビューに答えています。高校生たちの議論も穏やかで、筋の通ったものでした。 この映画のすばらしさというか、ボクを納得させたよさは、そこにあると思いました。監督が住民たちのことばを聴きだすことができるポジションに立っているのです。おそらく、この映画を撮ることを可能にした監督の思想の深さがそこにあると思いました。 で、監督のプロフィールですが アイリーン・ルスティック 監督が目指しているのは、二項対立によって思考停止、あるいは、考えるということが抑圧されている反知性主義の蔓延する社会に対する、 「ちょっと待って!」 ですね。 この態度は、新自由主義の横行というのでしょうか、うまくいえませんが、損か得かですべてを判断しているかの現代社会において、文字通り画期的ですね。 町に住む老若男女の穏やかなダイヤローグ、意見交換を重ね合わせるように映し出していきながら、今を生きている人間の未来に対する責任を、静かに問いかけてきた映画の最後に不思議な「ファットマン」の映像がフワフワと浮かんでいるのが印象的でした。 ちなみに、最初のチラシの奇妙な写真が、その「ファットマン」です。広島出身の被爆三世のアーティスト川野ゆきよさんの「(折りたたむ)ファットマン」というインスタレーション作品だそうです。映画の最後に映し出されますが、彼女の祖母の着物をほどいた布を、自らの髪で縫い上げ、長崎に落とされた「ファットマン」の造形を実物大の大きさで形作った、ちょっと凧のような作品でした。 まあ、これを見て、もう一度「核」について考えることを始めまてみませんか? 映画は、静かにそう呼び掛けているようにボクは感じました。拍手! 監督・編集 アイリーン・ルスティック 製作 アイリーン・ルスティック サラ・アーシャンボー 撮影 ヘルキ・フランツェン 2023年・93分・アメリカ 原題「Richland」 2024・07・20・no089・元町映画館no251 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.07.31 12:27:31
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