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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2024.10.16
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​岸田奈美「国道沿いでだいじょうぶ100回」(小学館)​
​​​​​​​​ サンデー毎日の日々を映画館徘徊で暮らしている老人ですが、春と秋のシーズン、週に一度だけ女子大生の皆さんとお出会いして、おしゃべりさせていただいています。
 で、その学校図書館でも本をお借りできるというラッキーを、ここ数年満喫していたのですが、今年2024年
​​「借りてばかりで、返さないのは、ちょっとあかんのじゃないだろうか。」​​
​ と殊勝なことを思いついてリュックいっぱいの本を担いでお返しに行ってみると、いかにも真面目そうな司書の方から
​​​「えーっとですね、ちょっと延滞がひどいですね。8月末迄貸出禁止ですね!」​​​
​ と申し渡され
​「アワワ!」​​
​ でした。ほぼ、半年前ね。​​​​​​​​​
​​​​​​​ で、9月の新学期になったので、「だいじょうぶかな?」とオソル、オソル、カウンターに差し出したのがこの1冊でした。
 岸田奈美という方の「国道沿いでだいじょうぶ100回」(小学館)です。
 書き手の岸田さんについても、内容についても何も知りませんでしたが、題名に励まされたんですね。
​​「だいじょうぶ!だいじょうぶ!」​​
​ でしたね(笑)。​​​​​​​
​​​​ で、書き手についてパラパラ見ていると「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(小学館)という本で評判になった方というのを見て、フト、
​​​「ああ、あの本の著者か?題名が、ちょっとイヤでスルーしたな。」​​
とか思いだしましたが、
​​「この3年間で「だいじょうぶ」が口ぐせになってしまった。」​​
​ という書き出しの「はじめに」から読み始めて、とまらなくなりました。短いエッセイを集めた1さっつなのですが、次から次へと止まりません(笑)。​​​​​​
 ​なんなんだ、この「????」は?
​​ ​​​​​はい、かっこの中にどう書いていいのかわからないので???なのですが、まあ、取り合えず思いつくのは「吸引力」ですかね。「馬が合う」というのでもいいかもですが、内容はともかくとして、語り口が気に入ったんでしょうね。​​​​​
​ で、まあ、案内としては、書名になっている「国道沿いで大丈夫100回」ですね。​
子どものころ、人気の遊び歌があった。
「奈美ちゃん、奈美ちゃん、どっこでしょう~♪」
保育園の先生が歌う。
「ここでっす、ここでっす、ここにいます~っ♪」
子どもらは大喜びで、返事をする。
母が歌う。
「良太くん、良太くん、どっこでしょう~♪」
返事はない。
弟はいつもどこかにいたけど、いつもここにはいなかった。
ジッとしていられない弟だった。だまっていられない弟だった。保育園でも、学校でも、歩道、公園でも、むちゃくちゃに跳ねまわっていた。軌道がまったく読めないスーパー・ボールみたいだ。
捕まえられるのは、母だけ。
弟を取り押さえるときに発揮する、母の爆発的な初速は、ラグビー選手のようだった。

保育園へ行く途中のことだ。
弟が国道へ飛び出した。一瞬だった。
母の足の間を急回転ですり抜け、彼にしか見えないなにかを追って、自由な魂みたく駆けてった。
道路のド真ん中で、弟はピタッと立ち止まる。
凍り付いていた母の時間が動いた。声もかれる絶叫だった。母は死ぬ覚悟で体を投げ出し、弟の服のフードをガッとつかむと、歩道へ引きずり戻した。
大型トラックが、轟音とともに走り去っていった。
あと5秒、遅れていたらだめだった。
母は地面にへたりこみ、震えながら、弟を抱きしめて放さなかった。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ、だいじょうぶ」
​ ​​​ここまでが実況中継、で、ここからが、著者である岸田奈美さん気持ち。​​​
幼かったわたしには、知らなかったことがたくさんあった。
弟がダウン症で生まれてきたこと。
身体がむずむずするから、手をつなぎたがらないこと。
フード付きの服ばかり着ていたのは、命綱だということ。
必死で弟の命を守ろうとする母の姿が、近所で不思議そうな視線にさらされていたこと。
弟がおもちゃを持って公園に行くと、親にそっと手を引かれて、離れていく子供たちがいたこと。
療育の先制の「愛が足りない」「しつけがなってない」という言葉で、帰り道に母が唇をかみしめながら、弟に頬をよせて泣いていたこと。
どんなに疲れ果てていても、悔しくても、母が外で笑顔を絶やさなかったのは弟を嫌わないでいてくれる人が、弟の命を守ってくれる人が、どうかひとりでも増えますようにという、祈りだったこと。
そんな苦労、わたしや弟は。なにひとつ知らなくてもいいように、「奈美ちゃんと良太が生きているだけで、ママはうれしい」と、何度も何度も、語り続けてくれたこと。
わたしはなんにも知らなくて。
いま、あの日に戻れたら。
国道沿いで、へたりこんで、泣いている母に会えたら。
「だいじょうぶ」って、100回言ったる。(P71)
​ と、まあ、こうです。いかがでしたか?
 実は、この章はまだまだ続きます。続きが気になる方は本書を手に取ってくださいネ。
​​​​​ 書き写しながら、岸田さんのおかあさんのことを思い浮かべてしまって、70歳の老人は、やっぱり泣いてしまうのですが、いい方がジジ臭くて申し訳ないのですが、書き手の岸田さんも、この母ありて、のお嬢さんですね。​​​​​
​​​​ 本書には、良太くん「ことば」を獲得していく興味深いエピソードとか、お母さんの入院の話とか、読み始めたら止まらなかったわけで、いかがでしょう、「面白い」は語弊がありそうですが、面白いですよ(笑)。
​​​​
 

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​​​​​​​​​​​​​​​​​ 追記
 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)​​​​

 

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最終更新日  2024.10.16 13:27:20
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