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カテゴリ:映画「元町映画館」でお昼寝
イリヤ・ポボロツキー「grace グレース」元町映画館 まあ、なんといっても、
出だしのシーンで鷲摑みでした!(笑)小さな滝というか、湧き水の水口で若い女性が水を飲んでいるのか、手を洗っているのか、いや、水を汲んでいたらしいのですが、彼女が水の入ったポリタンクを持って歩き始める、その動きに沿ってカメラが引いて行って、小さく細い水の流れが、ものすごい谷の底を流れていく川になっていって、崩れた崖の谷間の上の大きな山々、その山の麓に点在する集落が遠くにあって、彼女が歩いていく先には立ち木なんて一本もない、なんだか荒涼とした丘の上に赤いキャンピングカーがとまっていました。 おおー、スゴイ! 見たのはイリヤ・ポボロツキーという、ロシアの若い監督の作品、「グレース」でした。 キャンピングカーで移動して、野外映画会を興行している 父親と娘の旅 のお話のようです。 現代ロシア版ニューシネマパラダイスやん(笑) とか、なんとか、お気楽に見ていましたが、どうも違うようです。現代ロシア版地獄めぐりというのとはちょっとちがいますが、 現代ロシア版辺境めぐり のロードムービーでした(笑)。 老眼のボクには、なんというか、画面のトーンが暗くて、眠くて仕方がない映像だったのですが、にもかかわらず、面白かったですね(笑)。 まず、主役の娘さんが、まあ、彼女も暗いっちゃア暗いんですが、実にいいんですね。それから少年、親父さんも、親父さんとわけわからん関係になる、観測所とかで一人暮らしのおばさん、まあ、みんなよかったですね。会話らしい会話はほとんどなくて、どの組み合わせも、たがいにずっと喧嘩しているようにしか見えない関係なのですが、父と娘、少年と少女、旅の興行師と観測所の女、それぞれの描き方が、絶妙なのですね。 人間同士ってのはこういうもんでしょ。 まあ、監督さんがそうおっしゃっている感じで、納得しちゃうんですね。 それから、先日、ゴンドラという映画で気に入った、多分、コーカサスあたりの山岳風景、都市のアパート群、ショッピングモール、娘が 海に行きたい というので、 どこの海に行くんだろう?と思っていると、多分、北極海に面した北方地域の海ですね。で、そのあたりの空き家ばかりのお屋敷群、遠くに見えている海、何も通らない道路。ドキュメンタリィータッチでジーっと、だからロングショットで映し出される風景があって、その画面のどこかを走る赤いキャンピングカー、何もない山の間からフッと出て来たり、目を凝らしていないと見えないと思っていると消えてしまったり、 アカン、寝てまう! で、まあ、とどのつまりに、寒そうな海にじゃぶじゃぶ入っていった娘がすることを見て、ようやく、 ああ、そういうことか! でした。 いや、いや、この監督、この映画の娘の描き方もちょっとしたものですが、今後に期待しちゃいますね。拍手!です。 この映画で、印象深いのは 現代ロシアの社会の描き方 ですね。都市と辺境、男と女、子供と大人、要素はたくさんあるのですが、なんだか、とてもアンバランスで、そこがとてもリアルなんですね。 それから映画のトーンですね。画面のトーンじゃなくて、お話の筋立てですが、暗さとしか受け取られかねない展開なのですが、最後にたどりついたところに「希望」というか、未来への可能性を暗示しているとボクは思いました。拍手!です。 監督・製作・脚本・編集 イリヤ・ポボロツキー 製作 イバン・ニチャエフ 撮影 ニコライ・ゼルドビッチ 音楽 ザーカス・テプラ キャスト マリア・ルキャノバ(娘) ジェラ・チタバ(父) エルダル・サフィカノフ(少年) クセニヤ・クテポワ(観測所の女性) 2023年・119分・ロシア 英題「Grace」 2024・11・17・no148・元町映画館no266
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最終更新日
2024.11.18 03:30:58
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