【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

フリーページ

2005年10月21日
XML
テーマ:吐息(401)
カテゴリ:Essay

 急遽、用事ができて大阪に飛んだ帰り、秋晴れに恵まれた空の下、京都を散策した。
 わたしが大好きなのは、南禅寺から哲学の道を辿っていく銀閣寺である。
 ところが、今回は時間の関係もあり逆のコースを辿ってみた。

 銀閣寺は、亡くなった元夫と新婚旅行で行った思い出の場所である。
 わたしは若い頃からなぜか京都が大好きで、新婚旅行にはぜひ彼を案内してあげようと思っていた。
 景色にも草花にも、それほど興味のない彼が実際には、どう感じたのか分からないけれど、年老いたとき同じ思い出を語る場所としては、そう悪くないと思った。
 でも結局、わたし達は離婚し彼は先立ってしまったのだから、どっちにしても二度と語られることはなかったのだ。
 わたしが今立っているのは、紛れもなくあの時の哲学の道である。
 歩き疲れたわたしを労わり、後れ毛をかき上げてくれた彼が居たあの哲学の道。
 だけど、どんなに探しても彼はどこにも居ない。
 その現実をいやと言うほど思い知り、わたしはたまらなくなった。
 
 哲学の道沿いに、俳優の栗塚旭さん経営の『若王子』という喫茶店があった。
 当時、店に出ていた栗塚さんと遭遇し新婚旅行だと告げると、快く写真に入ってくれた。
 そんなエピソードを思い出して喫茶店を訪れてみたのだが、閉まっていた。

 疎水沿いの哲学の道は整備され、どこかこぎれいになっていた。
 茶店風の店はほとんどカフェテラス系に変わり、時代の流れを強く感じた。
 
 十代からずっと愛したこの哲学の道。
 色んな思い出がわーっと押し寄せてきたけど、やっぱり今は亡き元夫を一番思い出した。
 
 わたしが結婚を決意したのは、背の高い彼ならどんなにぶら下がり甘えても、びくともしないからだったのに、先に逝っちゃった。
 幸せにするって約束したのに、嘘つきだ。
 だけど、先にその約束を放棄したのは、わたしなんだよなー。
 だから、嘘つきはわたしの方なのだ。
 
 つまり、五分と五分。
 だから恨んだり、悲しんだりはもうしないよ。
 哲学の道を歩きながら、わたしはそう誓ったから……。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2005年10月22日 00時43分44秒
[Essay] カテゴリの最新記事


PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

カテゴリ

お気に入りブログ

ヒロコのつぶやき・… New! Hirokochanさん

今週は良いお天気が… しの〜445さん

パソってますか?  イプサム307さん
piled timber 北ちゃん’sさん
自分の人生の主人公… さくら・桜さん

© Rakuten Group, Inc.