ヴィゴの愛息ヘンリー・モーテンセン出演『刺青』の感想(注*ネタバレあり)
BLUE TIGER:1994年、日本/アメリカ監督:ノーベルト・バーバ出演:仲村トオル、ヴァージニア・マドセン、石橋凌、ヘンリー・モーテンセン他ストーリー:ハロウィン間近のロス。スーパーで幼い息子と買い物を楽しむ「ジーナ」は、日本のヤクザによる襲撃事件に巻き込まれ、たったひとりの愛息「ダリン」を失った。息子の仇の手掛りは犯人の胸に彫られた「青い虎」の刺青。復讐を誓う「ジーナ」は刺青師「スミス」から刺青にまつわる一対の虎の伝説を聞き、自分の身体に「赤い虎」の刺青を彫る。日本人のクラブでホステスをしながら仇を捜す「ジーナ」は、ついに「青い虎」の男を見付けたのだが・・・脳天気な私は、石橋凌氏から日本に招かれたヴィゴ親子が、撮影現場の見学でもしていて、急きょヘンリー君をシャレで出演させる事になったものだと思い込んでいました。全然違っていました。恥ずかしい・・・「ヤクザVSマフィア」と同じで、東映が出資。主役の仲村トオルと石橋凌を除いて、アメリカ人スタッフとキャストによるアメリカで撮影された映画でした。ヘンリー君は、ヒロインの息子「ダリン」役で最初からきちんと配役されておりました(汗)愛する人を奪われた者の復讐劇。よくあるパターンですが、幼い我子を殺されて復讐の鬼と化すのは優しげな母親というのが、見ていて辛かったです。冒頭、公園で、無邪気に遊ぶ「ダリン」=ヘンリー君!青いTシャツ、黒の半ズボン、ブラウンのサラサラの髪。母親を見上げる時の表情なんかヴィゴそっくり!笑い声まで含めてなんて可愛いのでしょう!!見つめる母親「ジーナ」=ヴァージニア・マドセン(「ゴッド・アーミー/悪の天使」でヴィゴと共演)の優しい表情が自然で良いです。母親の職業までは分からなかったのですが、スケッチブックに息子の遊ぶ姿を慣れた手つきで描いています。ただでさえ、この公園のどこかに愛息に注ぐヴィゴパパの優しい視線があるに違いない!と妄想モードに入っているのに、ヒロインの絵が得意という設定がますますヴィゴを連想させてドキドキしてしまいました。スーパーで母親と買い物中の次のシーン、ヘンリー君はヤクザの襲撃事件に巻き込まれて流れ弾に当たってしまうところを演じます。胸から流れる血、押さえる小さな手。思わず声を上げてしまいました。そして辛い事にそのまま「ダリン」は母親の腕の中で天に召されてしまうので、以降母親の回想シーンと写真でしかヘンリー君は登場しません。この写真がまた、きっとヴィゴが撮ったのね!と思わせ、ヴィゴファンなら知っている彼の子供時代(乙女座りヴィゴ)そっくりの写真があったりしますので、ファンには堪らないのですが・・・この作品、「ヤクザVSマフィア」と製作者、原案者等が同じで、共通の出演者も石橋凌、オクモト・ユウジ等何人かいます。使われるBGMもあれ?同じ?という位似ていました。人物描写が浅く、あちこちに都合の良すぎる無理な展開が見られて、決して出来が良いとは言えません。石橋凌も「ヒットマン」という役どころながら、主役を弟役の仲村トオルに譲っていますので、今回はただのチンピラです。息子を殺した犯人をヒロインの「ジーナ」」と共に捜すという肝心なところが、最初の襲撃シーンで、仲村トオルと石橋凌の身長差(マスクの下の目でも判る)から一目瞭然となり、サスペンスとしてダメダメです。それでも、唯一の肉親である息子を失った事で一時は錯乱状態にまで陥った母親が、子供の無念を晴らすことに生きる目的を見出し、日本人の集まるクラブでホステスをしながらチャンスを窺うという件には、母親の強い執念を感じる事が出来ました。その過程でヒロインは日本語や銃の扱いの練習をするのですが、背中に赤い虎の彫物をするシーンなどには、結構魅せられます。赤い虎を背負った「ジーナ」のシャワーシーンは確かに綺麗です。そしてもうひとつの見せ場は、ヤクザ「聖次」=仲村トオルと「ジーナ」の悲恋物語なのですが、この世でたったひとりの肉親を失った者同士が求め合い惹かれ合う、まるで伝説の「対の虎」のように・・・というお話は陳腐でいただけません。愛し合った後で胸の刺青に気が付くなんて、都合主義もいいとこです。ラストもいかにも日本人が好みそうな展開ですし。息子の仇を討つため、愛した男に銃口を向ける「ジーナ」。覚悟の銃弾に倒れる「聖次」。ヒロインの得たものは息子のためにやっと流す事が出来た涙だけ・・・という終わり方。持って行き方で、もう少し心に残る作品になったような気がして、惜しい映画でした。それにしても、ヘンリー君が撃たれるシーンなんてヴィゴはどんな想いで見ていたのでしょう・・・胸中複雑だったと思うのだけど・・・