安倍元首相の環境政策が、世界に届いいたか
日経新聞夕刊によれば、米政府が主催したエネルギー安全保障と気候変動に関する主要国会合は、9月28日2日間の会合を終え、地球温暖化を防ぐための長期目標の設定で合意した。米政府は、日本が提案している「2050年までに温暖化ガスを半減する」との目標を軸に検討する方針を表明しており、日本政府や安倍元首相の顔を立てた感じである。中国、インド等の新興国も含めて温暖化対策を進める長期目標で一致するのは初めてという。会合は、ブッシュ大統領が2012年に期限がきれる京都議定書の後の枠組みを検討するために招集し、開幕後に発表した議長総括で「気候変動に対する協議の場として国連が中心的役割を果たす」点を確認した。日経新聞朝刊によれば、今春公表された国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告は、平均気温の上昇幅(1990年比)が2-3度を超えれば「経済的な被害が拡大する」と分析し、上昇幅を2-3度以内に抑えるため、増加が続いている温暖化ガス排出量を2020年頃に減少に転じさせ、2050年までに半減するよう求めたという。安倍元首相の環境政策提言の背景にはIPCCの報告が在るのは勿論であるが、そうだとしても、米政府が、日本が提案している「2050年までに温暖化ガスを半減する」との目標を軸に検討する方針を表明したことは、正しい政策に関しては、米政府としても、安倍元首相への尊敬と日本政府への協力の意思を示しているといえるだろう。これに関して、以前のブログに以下の様な記事を書き、安倍内閣のホームページの目安箱に投稿していたのを思い出した。Sep 13, 2007安部首相の退任で温暖化対策サミットで日本の求心力に陰りか? 本日の日経新聞では、9月12日の安倍首相の辞任表明で来年日本で開く主要国首脳会議(洞爺湖サミット)で環境政策に対する日本の戦略に陰りが出るとの見方をしている。果たして、そうであろうか。日本の環境問題に対する貢献や、省エネ技術の開発、脱炭素技術の開発、淡水資源技術の開発などは、安倍首相が行ったものではない。もともと、日本にあった民間活力に世界的な環境意識が働き、時代の当然の流れとして進められてきたものである。日本が、この分野で開拓してきた位置づけは、長い時間をかけて、日本の企業や研究機関が政府の援助もあって、培ってきたものである。「2050年までに世界の温暖化ガスを半減する」という目標を盛り込んだ温暖化問題への総合対策「美しい星50」にしても、安倍首相がメッセンジャーボーイを勤めただけで、日本の科学技術や実用化技術の進展が背景にあって、それを一層展開し進めようとするものであり、安倍首相の一人の力で成り立っているものではないのである。後継首相も、こうした背景の中で、こうした環境政策を推進せざるを得ないわけであるから、そして、世界がそうした技術力等を必要としているわけであるから、サミットでの日本の求心力が低下しかねないことはあっても、環境政策の放棄をしない限りは、日本は世界の環境のキーマン足りうる素地をもっていることを強く自覚すべきである。米国主催の主要排出国会議など地球温暖化問題を議論する国際会議は目白押しで、環境省幹部は「誰が出席し、何を話すか全く分からなくなった」と述べているというが、メッセンジャーの後継首相が決まり、早々に環境問題への対処を重要政策と位置づければ、自ずと、日本の役割は決まってくることであろう。環境技術先進国の日本の援助がなければ、途上国の環境政策は実現出来ないのは、経済社会においても言えることであり、メッセンジャーのリーダーに適任者が選ばれれば、この問題に関する日本の求心力が低下することは、世界的な問題としての環境問題については不可能なことであろう。