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Feb 15, 2013
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          「小栗上野介忠順」 (9)


 夜の帳が落ちて来たころ、続々と庄屋宅の庭に集まって来た。

 忠順は五郎左に命じ、村民を大広間に集めさせた。部屋の中央には

酒樽が置かれている、男等の眼がそこに集中する様子が痛ましく忠順の

眼に映った。忠順が上座に座り、左右に小栗家の面々が居並んでいる。

「皆共、平伏いたせ」  筑紫五郎左がかすれ声で命じた。

 庄屋の安五郎は中央に村民が、ずらりと並び平伏した。

「ここに居られる方が、小栗家の若殿さまじゃ。御尊顔を拝するのじゃ」

 用人の筑紫五郎左が厳(おごそ)かに声を張り上げた。

 村民等がおそるおそる顔をあげ、忠順の顔を拝み平伏した。

「わたしが小栗家の忠順じゃ、見知りおけ。この村の前に上野の知行地に

寄って参ったが全てが不作の状況じゃ。先ずは小栗家の方針を申し渡す」

 忠順は言葉を止め一座を眺めまわした。村民等が息を飲み込んでいる。

「まず一年は年貢を免除いたす」

「・・・・」

 忠順の言葉に一座がざわめいた。

「有難や」 暫しの間をおいて感激の声があがった。

「安五郎、前に出よ」

 忠順の声で安五郎が恐る恐る膝を進め、村民が何が起こるのかと注視

している。忠順が五郎左に顎をしゃくった。

 五郎左が心得て紫の袱紗を捧げ、安五郎の前に置き手早く袱紗を開いた。

そこには包金が二個包まれており、五郎左がそれを取り出し安五郎の前に

押しやった。村民の眼に五十両の小判が蝋燭の灯りを受けて輝いている。

「この五十両の金子は小栗家よりこの村に下賜いたす。今年も不作であろう、

不測の事態に備えての庄屋の安五郎に預けおく。いずれ天候も良くなるだろ

う、辛抱して励むのじゃ。今夜は皆の苦労を癒すたろに酒を用意いたした、

遠慮のう憂さを晴らせ。女子供にも心づけを用意した」

 忠順の言葉に村民等が喜びの声をあげている。

 安五郎が一同を代表して礼を述べた。

「村民の窮状を察せられ、このような寛大なご処置を頂き恐悦至極に存じま

す。我が村は決して大殿さまはじめ若殿さまのご恩を忘れずに励みまする」

 お礼の挨拶を述べつつ安五郎の顔から涙が滴っている。

 忠順が大きく肯き村民に声をかけた。

「今宵は無礼講じゃ、酒を飲み日頃の憂さを晴らせ」

 それを待ち受けていた一同が、酒樽に殺到し大騒ぎがはじまった。

 そうした騒ぎを眺め忠順は心にきっするものがあった。不作は村民の責任

ではない、天候不順という天の配剤から起こったことである。

 それが分かりながら、為政者は村民の糧である粟や稗(ひえ)まで奪って

ゆく。そのような所業は為政者の怠慢と思える。

 忠順がぼっねんと思いを巡らせていると安五郎が、膝を進めてきた。

「若殿、まずは一献」

 と、茶碗を捧げ忠順に勧めた。

「わたしはまだ酒は嗜まぬが今宵は別じゃ」

 一気に飲み干した。

「若、お止め下され」

 筑紫五郎左が慌てて止めたが、一向に気にせず数杯飲んで忠順も大いに

騒いだ。(案外と酒とは旨いな) これが酒の印象であった。

 翌朝、村民の見送りをうけ次の知行地に向った。

 相変わらず空は鈍色(にぶいろ)の雲が厚く覆っている。

 昼となり寺の境内で休息していると、身形の立派な武士が声をかけてきた。

「失礼ながら、小栗家の若殿にございますな」

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Last updated  Feb 15, 2013 10:58:48 AM
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