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Jan 28, 2014
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「小栗上野介忠順」(223)  


 上野介はこの一件が落着しても、気を許すことなく三ノ倉に意を注いだが、

怪しい気配がないと知り、彼は二カ月近く権田村で生活することに成る。

 彼はこの地に永住を決め観音山に屋敷の建設を始めた。それとともに山頂を

開墾し、畑と水田を開く作業も開始した。屋敷が完成すれば家臣たちの住まいを

建て、塾を開いて村の若者達に学問を教えることを彼は構想していた。

 そんな時期に小高村から用水の掘削の要請を受けた。その村は水利が悪く

水田耕作に困り切っていたのだ。上野介は村の尾根の向こうにある稲瀬沢を

検分し、器械で測量を行い用水路の場所を決め、村人に指図し1260mの用水路

を完成させた。これが現存する小高用水路である。

 こうした平穏な生活も束の間で長くは続かなかった。

 先に暴徒に味方をした近隣の村の名主達が、小栗家には新政府の大軍を

打ち破る兵力を持ち、朝廷に対する反逆の意図があると東山道鎮撫使総督府

に訴え出たのだ。これを受けて総督府は、高崎、安中、吉井の三藩にたいし、

小栗誅戮の厳命を下した。東山道軍総督は岩倉具定(岩倉具視の子)である。

 そんな騒ぎと成っている事を露も知らず、上野介は東善寺の離れの一室で

桜の花を愛で乍、茶を喫していた。

「父上、大事が起こっているようにございます」

 又一と家臣の荒川祐蔵の二人が緊張した顔で現れた。

「何事じゃ」

「三ノ倉に東山道鎮撫使総督府の軍勢が集結中とのことに御座います」

「何と・・・官軍が」

 上野介の脳裡に戦慄が奔り抜けた。その感触は気味の悪いものであった。

 事実、高崎藩、安中藩、吉井藩の軍勢が三ノ倉に集結を終えていたのだ。

「我が家に対し、何か遺恨でもあるのでしょうか」

 又一が顔を曇らせ訊ねた。

「そのような謂れはない。東山道の軍勢が押し寄せようと話せば分かることじゃ」

 政府からお咎めを被る事など皆無であると信じ切っていたのだ。

「又一、三ノ倉の新政府軍の本営に家臣二名を派遣致せ。我等に異心のない

事を申し述べて来るのじゃ」

 上野介は話せば分かると読んでいた。二人の家臣を三ノ倉に派遣し交戦する

意志のないことを伝えたが、功を奏さず、翌日(閏四月一日)、高崎藩の宮部

八三郎が兵を率いて東善寺を包囲した。この時上野介は観音山に雨露を凌ぐ

屋敷を建築中で、要塞などではなく異心はないので、十分に見聞して、その旨を

総督府に伝えてほしいと説明した。さらに大砲や小銃も使者に手渡し抵抗する

意志のないことを示した。

 観音山を視察した宮部等は謀反の企てはないと判断したが、弁明の為に誰か

を高崎まで同道するよう要求した。

 上野介は当然の要求と思い、養子の又一と塚本真彦にそれを命じた。

 又一と塚本の二人が高崎に向かったあと、三ノ倉に再び軍勢が終結している

という不穏な情報が届いた。上野介は権田村の名主達と相談した結果、会津へ

の脱出を決意するに至った。村役人の中島三佐衛門の案内で一家は諏訪山麓

を抜け、湯治場の亀沢に入った。ここに権田村の名主・佐藤藤七が駆け込んで

きた。藤七によれば、東山道軍の先鋒、原保太郎に捕縛された藤七は小栗一家

の脱出を吐かされ、一行が戻らなければ村を焼き払うと脅され、連れ戻すため

に追ってきたというのである。ぎりぎりの選択を上野介は迫られたのだ。

 今となって新政府の魂胆が明瞭に理解できた。わしの命が欲しいのじゃ。

 彼等の執拗な態度で漸く分かったのだ。

 上野介は一家と家臣等を集めた。

「皆の者、権田村に戻れば命は無かろう、ここで女共と別れる」

「貴方、何を申されます。ご一緒に運命を共にいたします」

 道子が九ケ月の大きなお腹を抱えて訴えた。

「もし、わしが権田村に戻り命を失うような事態に成れば、又一も塚本も命はあ

るまい。そうなれば道子、そちのお腹のややが名門、小栗家を継ぐのじゃ」

「どうしてもご一緒は叶えませぬか」

「そちも武家の妻じゃ。無理を申すな、会津藩家老の横山主税殿を頼るのじゃ」

 上野介が柔和な口調で告げ。村役人の中島三佐衛門を呼びだした。

「そちにわしの母と妻子を頼みたい。守ってくれるか」

「殿さま、命に代えても会津の横山さまの許にお送り申し上げます」

 律儀な中島三佐衛門が、平伏し涙声で了承した。

「道子、母上を頼むぞ」

 母のくに子、道子、養女で又一の許嫁の鉞子が上野介の前に座った。

「さらばにございます。母上は途中で新潟に寄って下され、父上の墓参りを

お願いいたしますぞ」

 亡き父の忠高の墓は新潟にあったのだ。

「承知しましたぞ、 忠順殿、くれぐれも命を粗末にしては成りませぬぞ」

「ご心配成されますな、それがしも三河武士の末裔に御座る」

 上野介が声なく壮絶な笑みを浮かべた。

 彼は中島三佐衛門と農兵達に詳細な下知を与えた。村に戻る家臣は四名

とした。荒川祐蔵、大井磯十郎、渡辺太三郎、多田金之助を名指しで命じ、

残りの農兵は全て女共の警護に付けたのだ。

 残る四人には悪いが、犠牲者は少ない方が良い。

 上野介は横山主税への書状を認め、持っている金子を全て中島に託した。

「さらば一足先に東善寺に戻る」

 と一声残し、背筋を伸ばし足早に権田村へと向かった。


 もう一話追加で書きます。
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Last updated  Jan 31, 2014 12:38:54 PM
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