『指導者の条件』 松下幸之助
★「一人の知恵というものは、所詮は衆知に及ばないのである。」(p89)★「指導者は世論を越えて、より高い知恵を生み出さなくてはいけない。」(p119)★「指導者は才能なきことを憂うる必要はないが、 熱意なきことをおそれなくてはならない。」(p173)★「指導者は自分よりすぐれた才能を使うことが大事である。」(p182)━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【本日のブックレビュー】 ~名著の紹介~ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『指導者の条件』 松下幸之助――――――――――――――――――――――――――――――――――――――●これだけ人口過多な日本においても、人材の不足に喘ぐ企業や団体が少なくない ように思われます。ただし外部に人材を求める前に、組織メンバーの力が完全に 発揮されているかどうか、考えてみる必要があるのではないでしょうか。●メンバー1人1人がどれだけ優秀であっても、良き指導者に恵まれなければ 組織は混乱し、やがて衰退していきます。反対にメンバー1人1人がどれだけ 平凡であっても、指導者が個々の力を発揮させ、方向性を定める事ができれば 組織は驚くほど発展していく…ではそういった「指導者」に求められる資質とは?●「論語」の孔子、「三国志」の劉備、哲学者のソクラテスに政治家のリンカーン、 戦国大名の織田信長から明治維新の西郷隆盛まで、古今東西に渡る優れた指導者の 言行を集め、「指導者の条件」を解き明かそうとしたのが本書です。「経営の神様」 といわれた著者・松下幸之助の見解まで加えられた、何とも贅沢な1冊。●「あるがままにみとめる」、「謙虚である」、「使命感を持つ」といった指導者に とって心に刻むべき心得が見開きで1つ、合計102ヶ条掲載されています。 困ったとき、悩んだとき、優しく進路を照らし出してくれる「指針の書」。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【本日の<ここ読め!>】 ~名文の掘り下げ~━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★「一人の知恵というものは、所詮は衆知に及ばないのである。」(p89)――――――――――――――――――――――――――――――――――――――●指導者は常に人の意見に耳を傾けなければならない、といいます。 過去に成功体験があり、血気盛んになった指導者ほど周りの声が聞こえなくなる ものです。そういった指導者ほど、ともすれば独断に陥り過ちを犯してしまいがち。●指導者に求められるのは、「自身の知恵を押し通す力」ではなく、「他人の知恵を まとめ上げる力」。極端に言えば、自分に知恵を絞れなくても他人の知恵を絞れれば いいわけです。その意味で「衆知」を聞くというのは、とても大切なこと。―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★「指導者は世論を越えて、より高い知恵を生み出さなくてはいけない。」(p119)――――――――――――――――――――――――――――――――――――――●ただしその後で、一見矛盾しているかにも見える、上記の1節が出てきます。 「自分に知恵がなくっても、衆知が利用できればいいっていったじゃないか」 そう思われるかもしれません。確かに衆知や世論といったものは妥当なことが多い。 しかしそれだけに過去の常識やそれまでの社会通念に縛られていることも多いのです。●指導者には時として、こういった常識を超えて発想を生み出す能力、 世論を超えた新たな知恵をひねり出す力というのが必要とされるのですね。 結局「世論だけ聞いていればいい」とか、「自分の知恵だけ使ってればいい」 という「ORの世界」ではやっていけないのです。●そうではなく、普段は「衆知」を利用しながらも、時には「世論を超えた知恵」 を活用して自己を押し通すという「ANDの世界」。真に卓越した指導者になるには、 この世界の住人になる必要がありそうです。□■エッセンス■□「一人の知恵というものは、所詮は衆知に及ばないのである。」(p89)「指導者は世論を越えて、より高い知恵を生み出さなくてはいけない。」(p119)▼世論に流されない勇気と、自分ひとりの知恵に溺れぬ謙虚さ。□■今日の紹介書籍■□『指導者の条件』 松下幸之助オススメ度★★★★☆→・経営者、政治家、教師 ・子供や兄弟、部下をもっている方 ・自分の「人生の指導者」になりたい方