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ないものねだり

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2013.01.11
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マンション.jpg


これは、今から二十年ほど前の出来事...
寒の入りとはいっても、風呂あがりは喉が渇く。
同僚に捕まって、愚痴を聞きながら少し呑んだせいで余計に喉が渇いた。


銭湯の外は、湿った雪がちらついていた。
自販機で買おうにも、持って出た小銭は銭湯で使い果たし、
小銭入れは、5円玉がある以外ほとんど空っぽだった。


小銭を取りに、一旦アパートへ戻ろうと近道をした。
通ったことのない路地を歩くと、小さな公園があって、
公園の隣に、古そうなマンションが建っていた。


遠めの距離だったけど、ベランダに女が立っているようだった。
少し近くなると、三階...? 真ん中辺りの部屋ベランダだとわかった。


さらに近づくと、若くて半袖のワンピース姿だ。
女は、外を向いてるんじゃなく、部屋の方をじっと見ていた。
この寒いのに半袖かよっ?と、その程度の疑問は感じた。
腕時計の時刻は、午前00時少し前だった。


間近になって、女がつぶやいてるのがわかった。
「開けて... 開けて... 開けて... 開けて」という声が耳に入った。


マンションの正面まで来たとき、はっきり有り得ないと感じた。
ない、ない、駄目、駄目、有り得ない... 絶対有り得ない!
全身に鳥肌が立った。


石鹸やシャンプーを落としたけど、構わず走った。
一刻も早く、この場から離れたくて必死に走って逃げた。
どんな風に、アパートまで戻ったかなんて覚えてない。


帰り着くとドアに鍵をかけ、部屋の明かりを全部点けた。
ラジオも、テレビも点けて少しは落ち着いたけど、
恐ろしくて、気がどうにかなりそうだったんだ。


結局、あの夜は喉が渇いたまま、眠ることもせずに夜明けを待った。



女が、部屋に向かってつぶやいてた理由なんかわからないけど、
あの女がいたマンションは、荒れた廃墟だったんだ...













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Last updated  2013.01.11 15:54:57
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砂浮琴

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