頭痛肩凝り樋口一葉
井上ひさし 集英社井上ひさしの文学に材をとった脚本は好き。「イーハトーボの劇列車」は読むたびに鳥肌がたちます。実際、初読のときは通学の列車の中で読んで、読みきらなくて広島駅のホームで完読したのでした。堅い切符を握り締めて。「上海ムーン」は実際に観ました。魯迅先生の話。古本屋で買った「我輩は漱石である」、図書館で借りた「人間合格」。漱石の方は難解で太宰の方は印象が薄い。「泣き虫生意気石川啄木」はおもしろかったよ。で、「頭痛肩凝り樋口一葉」学校の授業で樋口一葉が出たときに、教官がさらりと触れたっけ。一葉は結核で、結核菌は体のどこにでも入り込む。骨に入ると肩が凝る。脳髄に入ると頭痛がする。正岡子規も結核で死にましたけれど、漱石に宛てて泣き言書いた手紙があります。「痛くて毎日泣いている」って。これも読んだとき、鳥肌だちました。大の男が家から駅舎まで聞こえるような泣き声をあげる痛み。新潮文学アルバムの子規か漱石かに載ってました。ご興味おありの方、どうぞ。ちょっと私もうろ覚えなので、図書館で拾ってこようと思います。閑話休題。ふうっとした無力を感じるお話です。わらべうた、よいやみうた。世の中が悪い。なんて言ってるけれど、世の中さんに出会ったことがありませぬ。時代が悪いと嘆くけれども、時代さんにもお会いしたことございません。正体のつかめぬ世界のなかで、「私がいた」ことを証だてることが、できるなら。荒れた手で筆をもって、肩凝りに悩み、頭痛を抱え、母の愚痴を聞き、恋心を押し込め、プライドだけは高く、夏子さんは小説を書く。あちらの世界になかば足を突っ込んで。最後、クライマックス、女の言い争いの台詞は、さすが凄絶でした。舞台で見ると、いかに迫力あらんことか。目をまんまるにして、早口で読んだよ。そして、あっけらかんと終幕。(続きは?)お話の背中にすがりつきたくなりました。(みんな幸せになったよね?)日本国憲法、覚えてますか?私たちはみんな、幸せを追求する権利を持っているのです。