テーマ:海外生活(7772)
カテゴリ:北米青春記・昔話
以前、ちょっとお洒落な街並のコンドミニウムに住んでいた。ムーミンと初めて一緒に暮らした部屋。ド田舎の旧奉行屋敷を衝動買いしてしまう前の話。 辺りにはデザイナーやら美術商がずらりと並んでいた。アタクシはその内の一軒のショーウィンドーを覗くのが楽しみだった。 その店は骨董美術商。それも日本の田舎から?と思われる様な品物が多かった。 コチラの日系人が誰でも憧れるあの階段状の引き出しや、きらびやかな屏風。漆塗りの螺鈿入り火鉢。古い民家の囲炉裏の金具。素人のアタクシが見て欲しくなる見事な掛け軸。そして奥には金銀色とりどりの絹で目映い刺繍が施してある古い着物。帰り道をちょっと遠回りにしてまで覗いていた。 お店のオーナーはコチラ人の優しい眼をしたオジサマで、大学で日本文化と美術を専攻して、ボク若い頃からの日本フェチをそのままお店にしちゃったんだ、と言う。なるほど。 ある日、洋館を衝動買いしてしまい引っ越し間際だった。 もうこの大好きな街から引っ越しちゃうんだな、あっと言う間だな、と感傷に浸りながらそのショーウィンドーに近付くにつれ異様な雰囲気に首を傾げた。 遠くからは彫刻?と思ったのだが。 お地蔵様だった。それも古い古いお地蔵様。 百年も二百年も山道を守りながら風化しお顔が消えてしまっている様な、ホンモノのお地蔵様。 それも三十体?ほど並んでいらっしゃる。 お金で売買していい物なのだろうか。 何も知らない成金コチラ人が「おージャパニーズ・ブッダ!」なんて買って行く姿を想像して背筋が寒くなった。このズボラでガサツなアタクシが、である。思わず全員に笠を被せてさしあげたくなった。 勝手にだが、こう想像する。きっと、開発される土地に祀られていたお地蔵様なのだろう。そしてさすがに日本では商品扱いできないので海外に売り飛ばされてしまったのではないだろうか。 そして数日後、その店をまた覗く事なくアタクシ達は引っ越してしまった。 引っ越して数週間後その街並を通ってみると、その骨董美術商はもうなかった。 - - - 似た話がまだある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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