ジークフリート・2~ジャン・ジロドゥ作
皆さま、ジークフリートの二回目のお話です。少々、早足でありましたが、前回は、登場人物の紹介とその背景をお話しました。ジークフリートは、戦争で記憶を失い、収容施設でエヴァに手厚い看護と、ドイツ語の…ドイツ人としての教育を受ける。始めは、ドイツの赤ん坊のようだった彼は、やがて、ドイツを率いる政治的リーダーとなっていく…。ドイツ人のドイツ風の身なりになっているジークフリート。だけど、ドイツ以前の記憶がない。ジュヌヴィエーヴのように七年前に戦争で行方不明になった恋人が、まるっきり、別人となって目の前に現れたら?果たして、失った全てを取り戻すことが出来るのでしょうか?第ニ幕ジークフリートの書斎。ジークフリートにフランス語の授業をする為にジュヌヴィエーヴとロビノーが待っている。部屋にあるものすべてが、恋人ジャークのものと違う。「赤インクを使わされている、あんなに嫌いだったのに!それに葉巻も、今じゃ葉巻も吸うのかしら!大嫌いだったのに…。」その中にパリのジャークの部屋にあった写真に似た女の肖像画を見つける。「きっとこれだけかも知れないわ、あの人の昔の生活と今の生活に共通のものは。でも、これだけでもちゃんとある。」ジュヌヴィエーヴは二人の授業の為に「私の授業に家具が口など出さないように」クッションを取ってしまう。そして、シャンデリアの明かりを消し…。「もし、二人とも見えなかったら、どんなに早くお互いがわかることか!」ジークフリートが授業に入ってくる。ジュヌヴィエーヴに色々な質問をしていく。二人だけの長い長いやりとりがある。ジークフリートは、彼女の言葉から何かを読み取ろうとするようであり、ジュヌヴィエーヴは、自分の気持ちを押さえながらも二人の記憶を取り戻そうとする。ジークフリートが言う「こうして身を置くことに、私は心のやわらぎを感じるのです。心が休まるのです。この若い女の人は、誰だろう、誰を愛し、何に似ているのだろうと考えていると。」ジュヌヴィエーヴは、行方不明の恋人ジャークのことを話し始める。すると、ジークフリートが、ジャークの話に興味を持ち始める。ジークフリートが、急用で呼ばれ、部屋を出て行く。ジュヌヴィエーヴは、入れ替わりに来たウァルドルフ将軍にフランスに帰るように諭される。ジークフリートは、ドイツにとって大事な人物であり、ジャークとしての思い出を思い出されては困るからだ。大砲の音。ツェルテンが革命を起こしたという。 ウァルドルフ将軍は、ほかの将軍と共に事態を治めるために出て行く。緊迫した中、ジークフリートは、再び、ジュヌヴィエーヴに会いに戻ってくる。「あなたにもう一度お会いするために、わざとここに忘れていったのです。私の勇気と、自信と、意欲を」二人だけの短い時ー。やがて、彼も革命を治めるために出て行く。ー幕ー第三幕一幕と一緒の待合室。革命は押さえられ、ツェルテンは、追放となる。去り際にツェルテンは、ジークフリートの秘密を明かす。かつて、病院に収容されたとき、外国軍隊の名札が着いていたこと。ジークフリートは、エヴァに真実を聞く。ドイツ人では、ない。七年前の亡くした記憶に苦しむ。再び、ジュヌヴィエーヴとの授業。ジークフリートは、知ってしまった真実をジュヌヴィーエーヴに打ち明ける。そして、「今のたった一つの慰めは、あなたと一緒にいることなのです。」と言う。ジュヌヴィエーヴも押さえられない真実を告げる。「あなたは、フランス人よ、私のいいなずけ、ジャークって、あなたなのよ!」ドイツから、自分たちから離れないで欲しいとジークフリートに言う、エヴァ。「ここでは六千万の人々があなたを待っている。向こうでは、そうでしょう、誰もいない…いらっしゃい、ジークフリート。」「いるわ、誰かがこの人を待っているわ…あなたの犬が…犬だけが待っているって言ったのは、嘘だったわ。…あなたのランプも、あなたを待っている。…流行おくれになった洋服も…人間を除いて、フランスでは、なにもかもあなたを待っている。」ジュヌヴィエーヴもジャークの時を取り戻そうとする。「選んでジークフリート…」「選んでジャーク…」ジークフリートは言う「何が選べよう、目の見えないものに」。ー幕ー二つの国、二人の女性の間で、ジークフリートが選んでいく生き方は?つづく