江ノ電 10キロメートルの奇跡
江ノ島電鉄の前社長を務めた、深谷研二氏が書いた「江ノ電 10キロメートルの奇跡」を読んだ。江ノ電は鎌倉駅から藤沢駅まで、全線わずか10キロしかない。だが、その乗客数は年間1,700万人を超える。【楽天ブックスならいつでも送料無料】江ノ電10kmの奇跡 [ 深谷研二 ]価格:1,620円(税込、送料込)古都鎌倉、景勝地江の島、湘南といった観光地を走り、単線の線路は住宅地を縫い、腰越地区では路面電車にもなる。それは、まるで遊園地の乗り物のようなエンターテイメント性がある。そんな特異性が奇跡を呼ぶのだろうが、目に見えない鉄道屋の心意気が欠かせない。鉄道は土地と土地、街と街を線でつなげる。いや、それだけでなく、時間を超えて、人の心もまたつながっていく。鉄道員の心とお客様の心とがつながるとき、安全に快適が加わり、安心が生まれていく。職人気質がそれを可能にするのだ。駅舎も車両も、形を変えず、大切に使っている。近代化した方がコストパフォーマンスはいいのだが、古いままであることが、かけがえのない価値を生んでいる。他にない稀少性だ。そして、それにおごれることなく広報活動も盛んだ。古くは「俺たちの朝」、さらに「最後から二番目の恋」しかり、「海街diary」しかりである。ローカル鉄道で、稀な黒字経営を続ける江ノ電だ。その経営努力の数々を紹介しているから、各社の一鉄道員から経営者まで、一読する価値はあると思う。そうそう、江ノ電ファンもね。