老後の資金がありません
垣谷美雨氏の小説「老後の資金がありません」(文庫本)を読んだ。主人公は50歳代の派遣女性。夫は57歳の会社員だ。長女の結婚が決まり、長男は就職が決まり、いよいよ自分たちの老後に向けて歩み出す、ごく一般的な家庭と言える。老後の資金がありません (中公文庫) [ 垣谷 美雨 ]ところがである。長女の嫁ぎ先は商売をしていて、その長男と挙式を挙げる。だから、椿山荘みたいな立派なところで600万円もの費用をかけて披露宴をするという。しかも費用は折半。イタリアへの新婚旅行、新居準備で、なんと500万円もの出費。義父が亡くなる。長男である夫が喪主を務めるが、閉店したとはいえ、老舗和菓子屋の葬儀だからと、結局、墓石と合わせて400万円の出費。1,200万円あった蓄えは、300万円になってしまった。さらに、追い打ちをかけるように、派遣社員の仕事は雇止め。夫も会社をリストラ。嫁いだ娘は、夫から暴力を振るわれているかもしれないという疑念も渦巻き、お先真っ暗になっていくのだった。お花の師匠さんの事件や、年金詐欺まがいのエピソードまでが加わり、さぁ、どうなる。「家計応援小説」と銘打っているが果たして…。面白い、と言ってばかりはいられないのだった。