ブロードバンド完結編3(セクハラインストレーション)~I国新築体験記9~
もう一つ驚いたことには、素晴らしいタイミングでI国のNTTが来ていた。電話線の工事に来たらしい。散々言ってもだめだったのに、ブロードバンドが来るのを見計らったようなこのタイミングはなんなんだ?!Andyが彼らと話すと「あー、俺達が遅かったからお前んとこに頼んじゃったんだなぁ、あはは」と言っていたらしい。ガク。Andyはハシゴを掛けて屋根に登り、A4くらいの長さのアンテナを設置している。「屋根に登ってるとこの写真を撮ってもいい?」と聞くと、「構わないよ!今晩ベッドで君の写真を撮らせてくれるならね!」と。セクハラ親父である。Andyが屋根に登っている間、Chrisと話していた。彼はイギリス出身で、21歳。I国に来たのは2ヶ月くらい前だそう。Andyは叔父さんで、一緒に働くために来たのだ。ファッキンI国は嫌いじゃないけど、ファッキン静かな田舎なので、家に帰りたいと思うことも度々だそう。今日は途中でファッキン雨が降ってきて、彼のスニーカーはファッキン泥だらけになった。若者の方が悪い言葉を使いがちだけど、これだけ頻繁にF*ckという人も珍しい。AndyがChrisと話している私を見て一言。「ヨーロッパの男はいいだろ」「あー、そうですねぇ」「Chrisはいいぞー!”安い、うまい、早い”だからなぁー! あ、でもときどきちょっと早過ぎるけどな、あーはっはは。」しばらく意味に気付かずぼーっとしていたが、嬉しそうなおっさんの顔を見て気付いた。また、下ネタすか・・・屋根に設置されたアンテナから黒いケーブルがのびている。それを雨どいにくくりつけて、家の下に下ろす。このケーブルにモデムを繋いで、モデムにパソコンを繋げばインターネットが可能となる。でもどうやってケーブルを繋ぐんだ?そんな私の小さな疑問はすぐに解消された。Chrisが電動ドリルを持って家の中にやってきたのだ。「ネット引くのこの部屋でいいの?」「う、うん。」「んじゃ、テレビどかすよ。」「う、うん。」まさか・・・そう、そのまさかで、彼はいきなり壁にドリルで穴を開けだした。メジャーで測ったりとかしないで、いきなりかよ・・・・1分弱後、穴は外壁まで貫通。太い針金を繋いだケーブルを穴に通していく。「俺が外で合図するからそしたら引っ張ってよ!」顧客と業者、美しい共同作業である。目出度く部屋の中にケーブルが入ってきた。Chrisが自分のパソコンで信号が確認。私のパソコンでも簡単な設定をすると使えるようになった。その後、作業完了の書類にサインする。そこに顧客のコメントを書く欄があった。「『今回の作業にとても満足しました。』って書くんだぜ!」隣でChrisが見つめているので、一言一句違わないように書いてやった。課長の家の工事も程なく完了。パソコンの設定もうまくいった。Andyがパソコンの中の写真を見せてくれた。「俺の子供達だ。男の子が5歳、女の子が3歳。 これは俺が作った前菜。 こっちはウエディングケーキ。 この薔薇も砂糖でできてるんだぜ! 俺はシェフだったんだ。 でも、仕事を変えたんだ。 下の女の子には心臓の病気があってさ。 ほら、鼻にチューブを付けてるだろ。 でも今は生まれた時に5つあった心臓に開いた穴も1つになったんだ。 本当にいい子なんだ」愛しそうに写真を見つめるAndy。そうかそうか。この人こんなセクハラ親父に見えても、ちゃんと子供達を愛してて、そのために仕事を替えれる優しいお父さんなんだなぁ。少しじーんとする。が、しかし。「来週の火曜日またこの付近に来るから、会わないか?」と誘われたのは、ただ単に彼がフレンドリーな男だということにしておこう、うん。