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カテゴリ:情報量理論
「高い血圧」というのは、「高い山」とはわけがちがうのです。「高い山」はそれなりに感触がわかります。「山が高いと」という文は考えにくいところがあります。これがくずれるとすれば、「高い山なら」になるくらいのものです。
ことばが伝えようとする情報を、専ら文法だけで考えようとしても、自ずと限界があります。 同じ名詞に「高い」という形容詞がついても、「高い血圧」と「高い山」とは、これくらい違うのです。ことばというものは本来、現実との対応があってはじめて成り立つのであって、ことばが対応する現実を抜きにして語ることができないものです。それを文法だけで解決しようとするところから、いろいろな不都合が生まれるのです。 庶民は利口ですから、そういうことを本能的に理解しています。ところが、中途半端に外国語をかじった人は、文法の知識だけで何もかも解決すると思いこんでいるので厄介なのです。 「高い血圧はさまざまな病気の原因になる」という日本語は、ありえないわけです。「血圧が高いと」、「高血圧は」のどちらかです。 ところが、医師のなかに「高い血圧は」と言って何の疑問も感じない人がいます。ことばを文法からしか見ていない。ことばが人間の使うものであることをわかっていない。ちょうど、医師が患者を人間としてみるのではなく、自分の知識を試す実験台としてみていないことに通じるものがあります。 少々脱線しましたが、次に行きましょう。 Elevated CRP levels have been associated with an increased risk of colorectal cancer and are a marker of poor prognosis. CRPはC-reactive protein、C反応性タンパクのことです。 こういう文があると、無条件で「上昇したCRP濃度は」とか「高いCRP濃度は」とかにする医師、翻訳者、英語サービス業者がいますが、不安定な名詞が主語になって「主語+は」になるなど、絶対にありえないことです。英語からみれば、冠詞の理解ができているかどうかという問題なりますし、日本語からみれば、「は」と「が」の使い分け、動詞で終わる言語の本質がわかっているかどうかという問題になります。 「CRP濃度の上昇に伴い、大腸癌のリスク上昇が観察されており、予後不良を示すマーカーとなっている」、「CRP濃度が上昇すると、大腸癌のリスクが増大することが観察されており、予後不良を示すマーカーとなっている」ほどの訳に落ち着くはずです。 もう一度、冠詞というものは、冠詞が「ある」ものにだけ注目するのではなく、「ない」ものにも注意をはらわなければいけないことを、忘れないでいただきたいと思います。 ←ランキングに登録しています。クリックおねがいします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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