[トライアリストの講座]の記事一覧 | 辞書も歩けば

きっちりした文を書く

　きっちりとした文を書く　061221の課題から　翻訳の勉強をしている人のなかには、「自分がふつうの日本語だと思っているものを使って何が悪い」と居直る人がいます。　いつも家庭で料理をしているから、料理屋でも同じようにやればいいと思っているとしたら、とんだ思い違いでしょう。　それと同じことです。　×　～は～が原因である。　×　～は～が特徴である。　もちろん、日常生活の話し言葉ではまったく問題のないことです。でも、普段着のまま出かけていける場所と、やはりそれでは具合が悪い場所があるように、仕事で医学の文章を書くとなると、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。　どこか横着をしているように思いませんか。一見、「象は鼻が長い」と同じ構造に見えますが、これなら、「象＝鼻長」ということでまったく問題はありません。（アラビア語の複合形容詞と同じ理屈です。）○ ～は～に起因する。○ ～は～を原因とする。○ ～の原因は～にある。　このうちのどれかに落ち着くところです。「特徴」も同じことです。○ ～の特徴は～にある。○ ～は～を特徴とする。←ランキングに登録しています。何かちょっとでも得るものがあったと思われたら、ぜひクリックをお願いします。

「ですます」調と「だ・である」調

　「ですます」調、「だ・である」調　日本語には、文章を書くとき、「ですます」調と「だ・である」調というのがあって、文書の性格に応じて区別しなければならないのは言うまでもありません。　ふつうは「ですます」調と「だ・である」調との区別ができればよく、何らかの効果を狙う場合には両方を交ぜてももちろんかまいません。いちばん困るのは無意識のうちに交じってしまうことです。　翻訳の仕事でもしようと思う人であれば、よほど身の程知らずにそう思うのでないかぎり、「ですます」調と「だ・である」調の区別くらいはできるはずですが、勉強を始めた人の少なくとも3人に1人は、「だ」調、文字通りの「だ・である」調、原則「である」調と絶対「である」調の区別ができていません。「だ」調というのは、基本的に新聞が採用しているもので、ノンフィクション、小説などは「だ」を多用するものでも、時に「である」も使うなど、文字通り「だ・である」調がほとんどです。　原則「である」調というのは、基本的に「～である」、「～であろう」、「～であれば」を使いますが、「～であると思う」のように、あとに「～と思う」が来る場合にかぎり、「～だと思う」、「～だと考える」を使ってもよいとするものです。　絶対「である」調はまさに「である」を徹底するもので、「～であると考える」の形を崩すことはありません。　意識の低い人のなかには「～だろう」が「である」調に反することに気がつかない人がいますが、ある程度よく理解している人でも案外気がつかないのは「だが」、「だから」という接続詞です。これは明らかに「だ」調です。　医学の文章を原則「である」調子にするか、絶対「である」調にするかは意見の分かれるところであると思いますが、トライアリストでは、絶対「である」調を採用しています。特別に意識しなくても絶対「である」調が書けるようになれば、残りのものはほぼ問題なく書けるようになるからです。　ごくごく初歩のことですが、なかなか身につかない人がいます。　どうも、考えるところをまちがえているようです。←ランキングに登録しています。何かちょっとでも得るものがあったと思われたら、ぜひクリックをお願いします。

人名と文献

　人名と文献番号　医学の文献には、頻繁に人名が出てきます。そのあとに [12]や、上付きのかたちで数字が書いてあることがあります。　初めて翻訳する人に何も言わないでおくと、この数字を省いてしまう人がいますが、これは必ず書いてください。　もし数字を省いて訳文だけのものを納品されたら、受け取った方は大変です。いちいち、元の場所を探して数字を入れなければなりません。この作業、内容的にはくだらない作業なのに、いったいどれくらい時間がかかると思いますか。　次に人名についてです。　Fagan et al. やFagan and his coworkersなどと書いてあります。よく、何でもかんでも原文の通りにしないといけないと考える人がありますが、日本語には日本語の形式があります。特別な指示がないかぎり、どちらも「Faganら」にしてください。　×××　ファガン氏と彼の共同研究者たち　××　ファガン氏とその共同研究者ら　ドイツ語の翻訳でこんな笑い話があります。　ドイツで発表した論文のいちばん多い人はだれでしょう。　×　もちろん、ミタルブ博士です。　ドイツ語では Fagan und Mitarb. と書きます。Mitarb.はMitarbeiterの略です。当然、Faganらです。これをFaganとMitarbと書いて納品してくる人が時々います。　気がつかないコーディネータがいて、クライアントも気がつかず、そのまま印刷物になんてもこともあります。　英語以外の言語ももっと大切にしろ。　その意味では、次のようなまちがいなどまだ可愛いと言えますね。　その昔、マラソンを走っていたPipichさん、ある大会ではピピックさんにされ、別の大会ではピッピヒさんにされ、どちらもランキングに載ったことがある。ハンガリーのSzaboさんも本当はサボなのにシャボにされ、ポルトガルのCunhaさん、クーニャなのに、クンハにされてました。　そう言えば、大事な会議の資料、原文でくれるように言ったのに、誤訳だらけの訳だけをよこしてきて、クレルモンフェラン（フランス）がクレルモントフェルランドになっていた。　英語以外の言語をないがしろにする人って、本当にいやですね。←ランキングに登録しています。何かちょっとでも得るものがあったと思われたら、ぜひクリックをお願いします。

英語の記号を日本語にもちこまない

　英語の記号を日本語にもちこまない。　言語にかかわる者が最初に心がけなければならないことは、言語を差別してはならないということです。　英語を日本語に翻訳すると、元の英語にある記号をそっくりそのまま日本語に持ち込む人がいますが、日本語には日本語の形式があるのですから、そんなことをする必要はまったくありません。　？や！もそうです。日本語には「か」というものがあって、疑問文であることがわかるのですから、何も？をつける必要などありません。「何か買う」のように疑問詞があるものはもちろん、「これ食べる」のようなものでも、前後関係で疑問文であることがわかれば、？などいらないはずです。　なんでもかんでも、自民党みたいにアメリカに倣え右する連中ばかりのこの時代に、「いや、自分は絶対に必要なとき以外に？は使わないんだ」というくらいの反骨精神のある人間がもっといてもいいと思うのです。　：や；も日本語のなかに持ち込むなんてとんでもないことです。第一、きたない。醜い。　“　　”をそのまま持ち込むことも厳禁です。「　　　」を使うのが日本語です。　もちろん、ことばに絶対はありません。　ただ、みながやっているからというのではなく、上に書いたことを踏まえたうえで、自分はそれでも使うのだというのであれば、だれにも止める権利はありません。　また、翻訳会社やクライアントからの指示であれば、そう簡単に拒否するわけにもいかないでしょう。　ですが、ただ何となく流されるのだけはやめましょう。　自分というものをしっかり持つことが、自立への第一歩なのです。←ランキングに登録しています。何かちょっとでも得るものがあったと思われたら、ぜひクリックをお願いします。