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南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

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2006/08/26
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よそ様にお話しするのも恥ずかしい母娘の攻防戦。
驚く顛末が待っています。
まずは読んでやってくだされ。


クッキーお散歩デビューの記事を書いているうち、気づいたら午後7時20分にもなる頃。
おっといけない!当のクッキーの散歩を忘れるところだった。

スィテの庭で遊んでいる娘たちを呼んで上がってこさせるより、私がクッキーを下に連れて行ってやり、そのまま3人で一緒に散歩に出掛けようと考えた。
タスマ(リード)を着けてエレベーターで下に降りると、ちょうど娘たちが遊び道具を片付けてスィテの玄関に入ろうとしているところ。

最初にやってきたエミは、クッキーを連れた私を見て途端に激昂。「タスマを私に頂戴!」といって無理やり私の手からタスマを引っ張ってとろうとする。
「慌てないで。どうして怒鳴るの?」と質すと、「これが私の性格なんだから!仕方ないでしょ!」と大変な剣幕。
きっと庭で友達同士遊んでいるうち、何か気に入らないことが起こったのだろう。

私は触らぬ神にたたりなしと、タスマをエミに譲り、玄関口を通って、庭へと出た。そのまま散歩に行こうとしたところで、私はふとナナとエミとの間で昨日交わされた約束を思い出した。
エミはナナより2つ年上で、犬のことについて少しは勉強してきたし、一応クッキーのご主人ということになっている。だから、エミは毎日自分がクッキーのタスマを握るんだと主張する。
しかし、可愛がり方は幼いなりに、負けずにクッキーのことが大好きなナナが、それでは黙っちゃいない。
じゃあ、朝はエミ、夕方はナナとか。朝はナナで夕方がエミとか。いろいろ協議した結果、1日交代でやろうということになったはずだった。
少なくとも、私が知っているのはそこまでである。

スィテの門をくぐろうとしたところで、私はエミの行く手を阻み、こういった。
「ナナとの約束はどうなった?今日はナナの番じゃなかったっけ?ナナにタスマを渡しなさい」と。
すると、先ほどから虫の居所の悪かったエミは、突然タスマを手放した。
慌ててタスマを引き寄せた私は、さすがにカッときてエミを叱りつけた。
「タスマを突然離したりしちゃダメでしょ!クッキーが道路に飛び出したらどうするの!?」
エミも負けじと「どうせクッキーは私の犬じゃないよ。アンネとナナの犬でしょ!」と捨てゼリフを残し、スィテの玄関に向かって駆け戻っていく。
「そうね。自分で散歩を放棄したいのなら、そうしなさい。あなたは家に戻ってていいわ」とエミの背後から聞こえるような大声で言うと、私はナナとふたりで散歩に出た。

(家に帰ったら、お仕置きしてやるんだから!エベ・ゲルディーミズデ・ジェザー・ヴェレジェイム!)

さて、散歩から戻り、いざ10階の我が家に着くと、鍵穴に鍵が入らない。エミが内側から自分の合鍵を差し込んで、他の鍵を受け付けないようにしたのだった。
私は、いつのまにこんな小知恵が回るようになったのかと舌を巻きながら、チャイムを鳴らし続け、ノッカーを叩き続けた。
しばらくドアの前での攻防戦が続いた後、ドアの傍までやってきたエミは、きわめて不機嫌な声で「ドアは開けないからね!アンネとナナは今日は外で泊まりなさい!」と怒鳴る。
私もしばらくは説得を試みたが、私の血を見事に引き継いで頑固なエミは、まったく聞く耳を持とうとしない。
そこで私は作戦を変えることにした。

「じゃあ、分かった。私たちはクッキーと一緒に下に降りるわ」
エレベーターの中で、私は苦々しい思いで、思わず呟いていた。
アッラハ・ジェザー・ヴェレジェッキ!(アラーが罰を与えるだろうよ/神様のバチがあたるよ)

1階まで降りた私たちは、しばらく外で暗くなるまで待った後、玄関脇にある配電盤のスイッチを全部下ろし、エミが一切の電気を使えないようにした。
以前にも立て篭もり行為に出たエミに試したことのある、燻り出し作戦である。
やがてエミは怒り泣きしながら階段を下りてきて、私たちの横をものすごい勢いですり抜けると、駐車場に停めてある鍵が閉まらなくなっている夫のポンコツワゴンの中に立て篭もった。
このようにカッカきているエミは、どう説得を試みても聞き耳を持たない。
私はしばらく放っておき、エミが十分に心細くなったところで、話をしに車のところへ行くつもりだった。

クッキーの足を洗ってやり、エサや水のチェックをして部屋に落ち着かせた。
ナナはオトゥルマ・オダス(居間)でテレビに齧りついている。
周囲の物事をあるべきところへ落ち着かせた後で駐車場に降り、ポンコツワゴンの中で横になってすねているエミのところへ行った。

エミは「今日はここで寝る」と言い張ったが、「誰かが車を開けて入ってきたらどうするの!」と家に戻るよう説得した。
そして、夕方のあの態度のわけを問いただす。しかし、いつも通り特別な理由なんかないのだった。肩をすくめてプイッと横を向くだけのエミ。
私はエミでもナナでもどちらでもいいから、散歩をさせるために下に連れて降りただけで、エミに散歩をさせないと言ったわけではない。しかし、ナナとの約束がある以上、それを守らないといけないということ。タスマを急に手放すのはとても危険だということ。クッキーの散歩をさせられなかったのは、誰のせいでもなく、いきなりキレて怒鳴り、散歩を放棄するようなエミ自身の態度が原因だということ。など、なるべく客観的にあのときの状況を振り返り話して聞かせた。
そして一緒に家に戻りなさいと、手を引き、無理やり自宅に連れ帰った。

エミは反省するそぶりもなく、家に入るなり子供部屋に閉じこもり、中から鍵までかけてしまい、中からワーワーと怒鳴っている。
私は部屋の鍵は持っていたが、いずれにせよ何らかのジェザー(罰)を考えていたので、自分から閉じこもったのをこれ幸いと、外から「夕食はなし。明日の朝までそこでそうしていなさい」と言ってキッチンに行き、遅い夕食の支度を始めた。
散歩の後、エミとのいざこざがあって、時計はもう8時半にもなろうとしていた。

そのうち、子供部屋からエミの叫び声と、ドアをドンドン叩く音が聞こえはじめた。
様子を伺う限りでは、トイレか何かの理由で、エミが外に出たくなったらしい。しかし、鍵がなぜか開かなくなったのだった。
私は落ち着いた声でエミに声をかける。
「どうしたの?外に出たくなったの?」
エミは半べそをかいたような声を出す。「出たいけど、カギが開かなくなったのよ~!」
「トイレなら開けてあげるけど、トイレなの?」
エミは口籠もってわけを言わない。やっぱりトイレなんだろう。
私は鍵を持ってきて鍵穴に差込み、回してみた。しかし、何度試みても、途中で引っかかってそれ以上回らないのだった。強く回しすぎたかなにかで、締め付けすぎてしまったのだろうか。
私はドライバーを持ってきて金属性のドアノブの部分を外してみたが、無駄な場所を外したことがすぐに分かった。これはたぶん、専用の道具がないと開けられない。

やーれやれ。自分で閉じこもったつもりが、閉じ込められてしまったか。
しかしこれは、どうかすると厄介だぞ。すでに土曜の午後8時半過ぎ。カプジュがこの時間に駆けつけてくれる鍵屋を知っていればいいのだが・・・。
イシテ・アッラハ・ジェザー・ヴェルミッシュ。。。(ほらね。アラーが罰を与えたんでしょうよ。。。)

私はエミを必要以上に興奮させないよう、声をかけた。
「カプジュ(住み込み管理人)を呼んでくるから、そのまま待っていなさい」
エレベーターで1階に降り、さらに階段を降りて地下にあるカプジュの家のドアを叩いた。家はシーンとして、ドアの前に靴ひとつ置かれていなかった。
カプジュは留守だった。
確か携帯番号が1階のエレベーターの横に書かれてたっけ。
私は携帯をとりに10階の家に戻り、エミとナナに帰ってくるまで待つようもう一度声をかけて、エレベーターに乗った。
エレベーターは、いつも通りゆっくりと降下していった後、突然ズンと軽い衝撃があって止まってしまった。いったん電気が切れた後、すぐに電気は戻ったが、ドアは開きもしないし、どのボタンを押してもピタリと止まったまま動き出す気配もない。

私はエレベーターの中に閉じ込められてしまったのだった。




いつも応援ありがとうございます。
まるで悪夢のような悲喜劇のような展開に自分でもビックリ。
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最終更新日  2006/08/27 10:05:15 PM
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