|
カテゴリ:読書
朱川湊人の作品です。
戦後の、東京下町のお話です。 5つの短編からなっていますが、どれも、ワッコちゃんこと「私」と、 鈴音(りんね)という「姉さま」とのお話です。 姉さまは透き通るように色が白く、とても美しい人です。 生まれつき体が弱く、27歳までしか生きられませんでした。 姉さまは不思議な力を持っていて、人の記憶や、 ある場所で起こったことも、遡って見る事が出来ます。 (京極夏彦の京極堂シリーズに出てくる、それとよく似た能力を持つ 探偵の榎木津をつい思い浮かべてしまうのですが、 あんなイカレポンチではありません。) 姉さまはすごく心優しく、繊細で、出来ればその力を使いたくないと思っています。 なぜなら、見たくもない恐ろしいことを見てしまうと、 その恐怖に耐えられなくなるからです。 また、人間の深い悲しみや苦しみを知ってしまうと、 身を切られるような辛い思いをするからです。 姉さまの力を知った刑事から、殺人現場を見てほしいと頼まれ、 姉さまは非常な苦しみを味わわされます。 しかし、そのときから姉さまは、強さも身につけていくのです。 朱川さんの作品としては、以前にも紹介した『花まんま』『かたみ歌』よりは、 印象が弱い気がします。 でも、昭和初期のノスタルジックな雰囲気は充分を楽しむことができ、 登場人物の人間らしさには、ホッとさせられます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
March 23, 2006 11:31:37 PM
コメント(0) | コメントを書く
[読書] カテゴリの最新記事
|