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カテゴリ:読書
最後まで読んで、ホッとし、希望がもてる作品である。
経済不況が続く中、銀行を中途退職した40歳過ぎの男が再就職し、 満足のいく収入を得ることの難しさ、 現代社会で生きていくことの厳しさが、リアルにユーモアを交えて描かれている。 これを読んで、シャレにならない読者も多いだろう。 「あの時こうしていれば」「別の道に行っていたら」「もう1度やり直せるなら」 などということは、誰もが一度は自分の過去を振り返り、考えてしまうことである。 しかし、人生に「たら」「れば」はなく、今が全てであり、前に進むしかない。 主人公が最後にそこまで思い到ったとき、私も「よし!人生まだまだこれから!」 と、明るく、晴れ晴れとし、元気がわいてきたのである。 あの日にドライブ 主人公の牧村伸郎は、かつては、大手都銀のエリート銀行マンだった。 しかし、牧村は上司へのたった一言でキャリアの道が閉ざされ、自ら退職を決めた。 当初は、すぐに再就職できると高をくくっていたのだが、そう甘くは無い。 公認会計士の資格でも取ろうと決め、それまでの腰掛で始めたのが、 〔月収45万円可〕の広告につられてなったタクシードライバー。 しかし、それも現実は厳しかった。 月収45万は愚か、毎日のノルマも果たせず全く稼げないため、 パートで働く妻の律子に頭が上がらない。 息子と娘にも冷たくあしらわれ、居たたまれない毎日。 輝かしい過去に縋りついて、元はエリート銀行マンだったことが忘れられず、 タクシー運転手仲間を見て、こいつらと俺は違うと蔑むような気持ちでいる。 暇な仕事の合間に牧村は、妄想にふけるようになる。 学生時代の彼女とあのまま別れずに付き合っていたら、 とバーチャルな世界を頭の中でつくり上げると、 素晴らしい人生ばかりが思い浮かんでくる。 現実と比較し「もう1度やり直したい」「どこに戻ればいいのか」と思い悩む。 昔の彼女の家の見えるところまでタクシーを転がしていき、 休憩と称して近くに停車し、妄想を繰り返すようになる。 しかし、牧村は、‘あの日にドライブ’するうちに、 ある事に、はたと気づくかされるのだった・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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