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カテゴリ:読書
この作品の書評を見ていると、賛否両論、好き嫌いが結構はっきりしていることがわかった。
私は、とても面白かった。 荒唐無稽だがありがちな設定を、東野氏は、新鮮な視点から描き、 人間の心の深い部分を抉っていると感じられた。 秘 密 杉田平介は、夜勤明けの午前8時過ぎ、妻が作り置いてくれた食事を温め、 テレビのスイッチを入れ、1人でぼんやり画面を眺めていた。 春休みに入り、妻の従兄が亡くなり、 その葬儀のため妻・直子ともうすぐ6年生になる娘・藻奈美が、 長野に帰省したため、1人で朝食をとっていたのだ。 藻奈美は、帰省のついでにスキーがしたいと楽しみにしていた。 そして直子と藻奈美は、交通の便のよいスキーバスにキャンセルが出たため、 運良く空席を確保でき、それに乗り込んでいたのだ。 ところが・・・! 平介がぼんやり眺めていたテレビに、長野の雪山が映し出され、 スキーバス転落事故の様子が映し出されていた。 そして信じがたいことに、その事故の犠牲者の中に、直子と藻奈美もいたのだ! 娘を守ろうとした直子は外傷がひどく、平介が病院に駆けつけて間もなく、息を引き取った。 藻奈美は全身が圧迫されて、呼吸ができなかったためか、脳に影響が残り、 植物状態になる可能性が極めて高かった。 愛する妻を失った平介は、娘だけは治ることを信じて、祈るようにその手を握り、涙した。 すると、奇跡的に藻奈美の手が動いた。 意識が戻ったのだ! しかし・・・!! 前置きが長すぎたようだが、これ以上書くと全然面白くないので、 平介と藻奈美が、その後どのような人生を送っていくのか、ぜひ読んでみてほしい。 悲惨な状況の中に、ユーモアもあって笑える場面も多いが、後半部は泣かされる。 複雑な心境になるのだが、何でも割り切れないのが人生であり、 それはその人の受け止め方1つで、プラスにもマイナスにもなるのだと、 つくづく考えさせられたのである。 ハードカバー 文庫 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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